HTTP/1.1 200 OK Connection: close Date: Tue, 21 Sep 2010 20:13:46 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Age: 0 東京新聞:押尾被告実刑 厳しさの中に冷静な目:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

押尾被告実刑 厳しさの中に冷静な目

2010年9月21日

 元俳優押尾学被告への実刑判決は、女性に異変が起きたのに、救急通報しなかった点を重くみた結果だ。救命が確実だったかのポイントに疑問をはさんだ判断には、裁判員の冷静さがくみ取れる。

 最大の争点は、東京・六本木のマンションで昨年八月に、合成麻薬MDMAを一緒に使用し、死亡した女性に対し、押尾被告が適切な救護措置をとったかどうかだ。

 弁護側は「女性は容体が急変した後、間もなく死亡した。被告は人工呼吸や心臓マッサージを繰り返した」と主張し、被告自身も「女性を見殺しにするような人間ではない」と無罪を訴えた。

 保護責任者遺棄致死罪という法律の構成要件や、救命救急の実態などを踏まえねばならない難しい裁判だったといえる。審理と評議に九日間を要したことにも、それがうかがえる。

 東京地裁の判決は、「明らかに異常な状態で、一般人の手に負える状況ではなかった」とし、被告が一一九番通報をすべきであったとした。マンションという「密室」で、女性の生命を救うことができたのは、押尾被告だけだ。

 「芸能人としての地位や仕事、家庭を失いたくないという自己保身のために、必要な保護をしなかった。酌量の余地は微塵(みじん)もない」「欲望の充足のためには、法規範の無視もいとわない悪質な犯行」などと、厳しい言葉で非難した。

 だが、保護責任者遺棄致死罪の成立は認めず、保護責任者遺棄罪にとどめ、量刑は懲役二年六月だった。一一九番通報したとしても、被害者の救命が確実だったかが立証されていないと判断したためだ。弁護側の証人の救命救急医は「集中治療室に搬送できたとしても、救命可能性は30〜40%」などと、検察側とは異なる証言をしていた。検察の立証に合理的な疑いをさしはさんだ裁判員らの判断は、冷静だったというべきだ。

 有名人が被告席に座る初の裁判員裁判ということでも注目された。元俳優であることから、ワイドショー番組や週刊誌などで、逮捕当時から、大きく報道されてきた点も異例だった。

 これらの情報を裁判員が耳にし、目にしたとしても、予断を持って審理や評議に臨んではならない。裁判員が会見で「報道の影響はなく、法廷で見聞きしたことで、客観的に判断できた」「有名人でなくとも、判断は同じだ」と語ったことは、裁判員制度への理解の浸透が読み取れる。

 

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