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天声人語

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2010年9月22日(水)付

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 「粛々」という表現を使ってよく知られているのは、江戸時代の儒学者、頼山陽の漢詩だろう。「鞭声(べんせい)粛々 夜河を過(わた)る……」。武田軍とまみえる上杉軍が、馬に鞭打(むちう)つ音もひそやかに川を渡る。静かでおごそかな様を表す言葉である▼だが、近年は政治家や役人に軽く乱用されてきた。本来の重みを失ったと嘆く声も聞くが、さて、前原外相はどうか。尖閣諸島沖での海上保安庁巡視船と中国漁船の衝突をめぐって、「国内法に基づいて粛々と処理をする」と述べた▼軽い形容ではなく、この粛々は「毅然(きぜん)」と読みたい。法治国家の重みをのせた一言だろう。そして、その「粛々と処理」に中国側の反応が激しい。官民が入り乱れての対抗措置は居丈高だ。これでは理性的な日本人にも反感のガスがたまりかねない▼中国側は閣僚級の政府間交流の停止を決めた。東シナ海ガス田開発の条約交渉の延期や、上海万博への青年訪問団の受け入れ延期などを一方的に通告してきた。あれやこれや、「互恵」をうたう衣の下から大国主義が見え隠れする▼かつて小泉政権下で日中関係は凍りついた。その後、温家宝首相の「氷を溶かす旅」と、胡錦濤主席の「暖かい春の旅」の訪日で関係は改善した。とはいえ日中は、歯車が狂えばたちまち厳冬に戻る不安定を抱えている▼たしか老子だったと記憶する。相手に負けを意識させない勝ち方というのを説いていた。固有の領土に毅然はむろんだが、そうした収め方を探れるか否かで、菅内閣の器も問われよう。試金石にして、正念場である。

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