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敬老の日 不明高齢者のいない社会に(9月20日付・読売社説)

 〈多年にわたり社会につくしてきた老人を敬愛し、長寿を祝う〉。きょう「敬老の日」を定めた意義を、祝日法はそのように記している。

 今年は、この日を複雑な思いで迎えた人が多いだろう。

 7月末に東京都足立区で、都内の男性最高齢111歳とされていた人が、実は30年以上前に自宅で死亡していたことが発覚した。亡くなったことを隠して男性の年金を受給し続けた家族が逮捕、起訴されている。

 これを契機に、各地で続々と明らかになった安否不明高齢者の問題は、「長寿社会」の寒々しい実態を浮き彫りにした。

 今月15日時点で100歳を超える人は、住民基本台帳の上では前年より約4000人増えて、4万4449人になるという。

 だが、正確な人数は特定できない。全国の自治体で所在確認は進んでいるものの、まだ安否不明者がいる可能性がある。

 90歳以上、75歳以上と調査範囲を広げれば、不明者の数はさらに増えるだろう。

 戸籍制度の形骸(けいがい)化した一面も浮かび上がった。

 死亡届が出されず、戸籍の上では「生存」しているのに現住所が分からない100歳以上の高齢者は、23万人もいることが、法務省の調査で判明した。

 戦災で亡くなった人の戸籍が残っているケースなども多いと見られ、必ずしも今回の問題と同一視はできないが、このままでは戸籍の信頼性も損なわれよう。

 いずれにせよ、高齢者についての記録が、消息を確認しないまま放置されてきたことは、高齢者に対する社会的な関心の低さを反映している。

 行政の怠慢だけで片づけることはできない。家族からの届け出を前提に高齢者の現状を把握する仕組みは、すでに相当前から限界を迎えていたのではないか。

 人間関係が薄まる中で社会の高齢化は加速していく。家族の大切さを再確認するだけでなく、それを補完する様々な形の「縁」を築くことが求められよう。

 行政と地域が、ある程度は高齢者の個人情報を多角的に共有すべきである。社会保障番号を整備して、医療や介護など福祉制度を連携させる必要がある。戸籍や住民登録のあり方を含め、制度を見直し、整える時だ。

 社会として〈老人を敬愛し、長寿を祝う〉には何が必要か、熟考する日としたい。

 誰もが未来の老人である。

2010年9月20日01時20分  読売新聞)
東京本社発行の最終版から掲載しています。
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