HTTP/1.1 200 OK Connection: close Date: Sun, 19 Sep 2010 23:12:00 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Age: 0 東京新聞:今年の夏は、ミステリーじみた話がニュースをにぎわした。家族…:社説・コラム(TOKYO Web)
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【コラム】

筆洗

2010年9月20日

 今年の夏は、ミステリーじみた話がニュースをにぎわした。家族と暮らしていたはずの百歳を超えた高齢者が、数多く所在不明になっていることが次々に判明。「無縁社会」に漂う孤独に胸が痛んだ▼いま、百歳を迎えている人たちはどんな時代を生きてきた人なのだろうか。ふと、気になって、船曳由美さんの『一〇〇年前の女の子』を手に取ってみた▼百一歳の母テイさんが主人公。米寿を過ぎてから、重しが取れたように生後すぐ引き離された実母への思いや、幼いときの思い出を語り始めたという。明治・大正・昭和初期の自然豊かな農村で、けなげに生きる少女の姿を通し一世紀前の日本の風景が、よみがえる▼田植えの時は、早苗の束を箱やカゴに入れて田んぼまで運ぶ。刈り取ったイネのモミ落としや、カイコのえさになる桑の葉摘み、イナゴ捕り。子どもたちの仕事は山ほどあった▼神仏を敬うさまざまな四季折々の行事が暮らしと密着し、結(ゆい)を組んで助け合って生きる。おそらく百歳を超えるお年寄りの多くが、同じような光景を見ながら育ったに違いない▼この百年の間に、三百十万人もの命が失われた戦争があり、戦後の高度成長によって、私たちの暮らしは激変してしまった。百年前の少女の目に映った懐かしい風景はよみがえらない。ただ、大切なものをこれ以上失わないようにすることはできる。

 

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