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「日本で老人は敬意を払われておりKeiroNoHiという祝日まである」。米誌ニューズウィークは8月下旬の号で、日本を「年をとるのに一番良い国」とたたえた。だが、高齢者の所在不明が数多く発[記事全文]
ニューヨークの国連本部できょうから、約140カ国が参加してミレニアム開発目標(MDGs)首脳会合が開かれる。5年ぶりの開催だ。MDGsとは、世界の貧困、教育、環境など8[記事全文]
「日本で老人は敬意を払われておりKeiro No Hiという祝日まである」。米誌ニューズウィークは8月下旬の号で、日本を「年をとるのに一番良い国」とたたえた。だが、高齢者の所在不明が数多く発覚し、その看板は大きく傾いた。
100歳以上の人口は、統計をとり始めた1963年の153人から、今年は290倍の4万4449人になった。市町村の住民登録を機械的に集計したこの数字はかなり疑わしいが、生活にほかの人の支えが必要な高齢者が急増しているのは間違いない。
たとえば、認知症のお年寄りだ。現在の推定208万人が、30年には353万人に増え、65歳以上の10人に1人が認知症という時代になる。
家族と同居していたはずが死亡が届けられなかったり、行方不明になったりしていた事例も目立つ。「家族が面倒をみる」という前提が成立しにくくなる今後、「個」としての高齢者を誰が見守り、どう支えるのか。根本的に考え直す必要がある。
高齢者に限らず、地域で困難な状況を抱えた住民に接触し、行政へ橋渡しする役割は民生委員が担ってきた。現在、23万人弱が全国で活動するが、これから急激に高齢化が進む都市部で、なり手が不足している。
相談などを持ち込まれる市町村側にも限界がある。「家族の中で孤立している」「悪徳商法の危険にさらされる」「買い物やゴミ出しができない」といった日常的な問題に公費を使って対応するのは、財政難に拍車をかけるだけに難しい面がある。
どうすればよいのか。新しい工夫は各地にある。千葉県鴨川市では、民生委員任せにせず、地域ごとに「見守り」を担う人材を育成中だ。東京や大阪では「市民後見人」の養成や支援に取り組んでいる。
ボランティアだけでなく、企業の力も取り込みたい。高知県ではスーパーマーケットが県の補助を受けて、過疎地の「買い物難民」のために移動販売車を走らせている。
こうした活動の担い手として「団塊の世代」には大いに期待したい。会社員であれば定年を迎え、年金を受け取り始めるころだが、「年寄り扱い」は望まない人も少なくない。仕事で培われた能力と経験を生かし、経済の主役から地域の支え手に移るモデルを、若い世代に示して欲しい。
参加を促す仕組みづくりも大切だ。地域で活動した時間を積み立て、自分が受ける立場になった時に引き出す「時間預託」、介護支援ボランティアのポイント制といった例がある。
「支えた人が、後で支えられる」関係を社会全体でつくれてこそ、「敬老の心」は再生産され、社会全体の活力も維持されるのではないか。
ニューヨークの国連本部できょうから、約140カ国が参加してミレニアム開発目標(MDGs)首脳会合が開かれる。5年ぶりの開催だ。
MDGsとは、世界の貧困、教育、環境など8分野で改善をめざす国際目標だ。2015年を最終年として、00年の国連サミットで合意された。その進み具合を点検し、今後の取り組みを協議するのが首脳会合の狙いだ。
改造内閣を発足させた菅直人首相も演説する。内外での「最小不幸社会」の実現を持論とする菅首相の国際社会へのデビューの舞台として、これほどふさわしい場はあるまい。
目標への成果はまちまちだ。中国やインドなどの経済発展によって、一日1.25ドル未満で暮らす人の数は90年当時の18億人から約14億人に減った。「貧困人口を15年までに半減」という目標はなんとか達成できそうだ。
しかし、アフリカや南アジアでは、HIVエイズなどの感染症や安全な水の不足に苦しむ人が少なくない。
とくに改善が遅れているのが保健と教育分野だ。5歳未満児の死亡率は、90年当時の出生千人あたり100人が約70人に減った。けれど「幼児死亡率を3分の1に減らす」という目標の実現にはほど遠い。妊産婦死亡率の改善もわずかにとどまっている。
「すべての子どもが初等教育をうける」も目標だが、今なお約7千万人の子どもが学校に通っていない。
保健や教育分野は実は、日本の得意分野だ。戦後、保健婦の活動によって日本は乳幼児や妊産婦の死亡率を減らした。教育の普及の早さでも実績がある。単なる「はこもの」づくりではなく、行政とコミュニティーとの連携や人材養成を通じて、確実に成果が出る支援を強めるべきだろう。
とはいえ、政府の途上国援助(ODA)での日本の存在感は弱い。この10年余でODA予算は半減し、国の経済規模と比べた昨年の援助実績は先進23カ国中最下位から3番目で、財政危機にあるギリシャさえ下回った。
途上国で日本の評判が比較的いい背景には、長年にわたる開発協力や人的交流の積み重ねがある。これ以上ODAが減れば、せっかく築いた日本への信頼が揺らぐのは避けられまい。
信頼回復への手がかりになりそうなのが、東アジア諸国との連携だ。
韓国はODAを増額させ、中国や東南アジア諸国も「南南協力」を強めている。ニューヨークでは、東南アジア諸国連合(ASEAN)と日中韓が初めてMDGs達成への協力を話し合う。東アジア諸国の発展の経験は他の途上国にも役立つことだろう。
日本も貧困や失業問題に直面している。相互依存の進んだ世界で、日本が元気になるには、世界も元気になってもらう必要がある。