HTTP/1.1 200 OK Date: Sat, 18 Sep 2010 00:13:44 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:あるケチな男がいた。どれくらいケチかというと、ウナギ屋の隣…:社説・コラム(TOKYO Web)
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【コラム】

筆洗

2010年9月18日

 あるケチな男がいた。どれくらいケチかというと、ウナギ屋の隣に引っ越して、毎日、漂ってくるウナギの焼けるにおいをおかずにしてご飯を食べた▼ところが、ある日、ウナギ屋の主人が来て「勘定を払え」と言う。「食ってもないのに何の勘定だ」と怒ると、相手はこう言う。「においの“かぎ賃”だ」。落語『しわい屋』にある笑話▼京都市の製菓会社の工場から出る焼き菓子などの甘いにおいで苦痛を受けたとして、周辺住民らが会社などに損害賠償を求めていた裁判で、京都地裁が先日、におい被害を認め、会社側に二百八十万円の支払いを命じる判決を下した▼件(くだん)のしわい屋の男なら、それをかぎかぎ渋いお茶でも飲むだろうが、現実はそう甘くない。住民らは、甘いにおいが付くため洗濯物も干せず、頭痛などの健康被害も出ていると訴えていた。判決も「短期間ならともかく長い間継続した場合は、かなり苦痛」と酌んだ▼例えば地下鉄で隣席の人のヘッドホンから漏れてくるのが好きな曲でも、喜ぶ人は少なかろう。どんな「いいもの」も無理やり知覚させられれば不快なこと、においに限らぬ。のべつとなればなおさらだ▼あのウナギの話では、男は「払ってやる」と金を出して、チャリンと鳴らしてから言う。「においだけのお代だから払いも音だけだ」。無論、賠償金の場合は、音だけとはいかない。

 

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