HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 17346 Content-Type: text/html ETag: "11195c-43c2-28ed00" Cache-Control: max-age=5 Expires: Fri, 17 Sep 2010 23:21:27 GMT Date: Fri, 17 Sep 2010 23:21:22 GMT Connection: close asahi.com(朝日新聞社):天声人語
現在位置:
  1. asahi.com
  2. 天声人語

天声人語

Astandなら過去の朝日新聞天声人語が最大3か月分ご覧になれます。(詳しくはこちら)

2010年9月18日(土)付

印刷

 このところ、日本の先行きを「ジリ貧からドカ貧へ」と案じる声によく出会う。昨日の小紙コラム「経済気象台」にもあった。この言い回しは日米開戦を懸念した海軍出身の元首相、米内光政の言がよく知られている▼「いわゆるジリ貧を避けようとしてドカ貧にならぬよう、ご注意願いたい」。開戦前の日本は「ジリ貧論」が台頭していた。いまの閉塞(へいそく)感は当時と似ているのかもしれない。そして、ドカ貧に沈むか、浮くかの舵(かじ)取りが、菅新内閣と民主党の新執行部にゆだねられる▼挙党態勢を掲げたものの、「脱小沢」の色は濃い。カギを握るのは首相より、むしろ岡田幹事長かもしれない。似顔絵を描くのに定規がほしい、とかつて小欄で書いた。「融通が利かない」という評を退け、党内をまとめあげる任は重い▼「脱小沢」と「挙党態勢」を両立させる困難は、シェークスピアの「ベニスの商人」の名高い判決を思わせる。「(借金のカタに)胸の肉を切り取るのはよいが、血は一滴も流してはならぬ」。実行するのは神わざの域、と言えば大げさになろうか▼米内が抱いたドカ貧の心配は、国の破滅となって的中した。いま閉塞感の下、若い世代に「焼け野原願望」なるものがあるそうだ。世の中すべてをリセットしたい願望だという。希望喪失のさまに暗然となる▼小沢氏側の面々も、意趣返しにかまけている暇などあるまい。ケンカはおいて仕事をしてくれ、が国民の声だ。失われた歳月をこのうえ積み重ねる愚は、それこそ日本をドカ貧に落とす。ご注意願いたい。

PR情報