政府・日銀がドル買い円売り介入に踏み切った。為替市場はひとまずドル高円安に動いたが、日本単独の介入では効果は限定的だ。ここで手を緩めず、デフレ阻止に強い決意を示さねばならない。
政府・日銀が為替介入するのは二〇〇四年三月以来、六年半ぶりだ。東京市場で一時一ドル=八二円台後半まで円が急伸したのを受けて、財務省が決断した。
金融市場では「日本の単独介入はない」との見方が根強く、海外ファンドを中心に円高株安を狙う動きが続いていた。この水準での単独介入には意外感もある。仕掛けたファンド勢が政府の逆襲に遭った格好だ。
菅直人政権としては前日の民主党代表選で菅首相の続投が決まった直後というタイミングでもあり、ここで動かなければ、市場に「菅政権は円高容認」と受け止められる懸念もあった。
政府は介入したかどうか言及しないのが通例だが、今回は野田佳彦財務相が介入直後に会見であきらかにした。白川方明日銀総裁も為替安定を期待する談話を発表した。周到に手順を整え、市場に強いインパクトを与えたい政府・日銀の意図を物語っている。
その後、為替市場は二円ほど円安に戻し、株式市場も平均株価が上昇した。だが、やや長い目で見れば、米国の金融緩和姿勢が強く「円高のトレンドは変わらない」という見方が強い。
円高が続くのは基本的に米国が緩やかな物価上昇を続ける一方、日本は物価が下落するデフレに陥っているためだ。中長期的な物価動向の違いが円のドルに対する相対的な通貨高を招いている。
日本のデフレがなぜ続くのかといえば、金融政策の失敗という側面が大きい。とくに〇八年の金融危機以降、米欧の中央銀行は一斉に通貨供給を拡大したが、日銀はそれほど増やさなかった。
為替介入も日本単独では効果が薄いうえ、せっかく介入で市場に供給した円を日銀が後で吸収(不胎化)してしまえば、さらに効果は限られてしまう。
日銀は「円の吸収」をせず(非不胎化)「通貨供給を増やす」という本来の政策を徹底すべきである。政府は今回の介入が弾の無駄撃ちにならないよう、市場に供給した「円」の扱いについても日銀の考え方を聞いてはどうか。
さらに物価安定目標も検討対象になる。「介入で効果があった」と喜んでいる局面ではない。「次の一手」こそが重要だ。
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