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2010年9月17日(金)付

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岡田新幹事長―新しい政治文化の先頭に

菅直人首相が掲げた「オープンでクリーンな政治」の担い手にふさわしい人物であり、歓迎する。菅政権を支える民主党の幹事長に、岡田克也外相の起用が決まった。[記事全文]

日印FTA―自由貿易圏へ弾みがつく

明日の巨大市場と日本が、自由貿易でつながる。12億の人口を抱え高成長を続けるインドと経済連携協定(EPA)を結ぶことが固まった。来月、インドのシン首相の訪日にあわせて正式に決めるという。[記事全文]

岡田新幹事長―新しい政治文化の先頭に

 菅直人首相が掲げた「オープンでクリーンな政治」の担い手にふさわしい人物であり、歓迎する。

 菅政権を支える民主党の幹事長に、岡田克也外相の起用が決まった。

 岡田氏は、開かれた党運営と政治資金の徹底した透明化が持論だ。

 代表選に勝ち再スタートを切る菅政権は、「脱小沢」路線を今後も貫く。そのことを強く印象づける人事だといっていい。

 党内融和を優先し中間派からの幹事長起用も一時は検討されたようだが、そんなことをしたら世論の手痛いしっぺ返しを受けていたに違いない。

 小沢一郎前幹事長を退けることができたのは、大方の民意が菅首相続投を支持したからである。国民の多くは、小沢氏に体現される「古い政治文化」からの脱却を求めている。

 首相が向き合い、語りかけるべきは国民である。就任以来、党内向けの発信に腐心しているようにも見えたが、これを機に明確に方向転換すべきだ。

 この人事で世代交代の歯車も回る。

 政権交代は、菅首相、小沢氏と、鳩山由紀夫前首相の3人が力を合わせることで実現した。しかし、先の代表選最後の演説で、菅、小沢両氏がともに世代交代の重要性を指摘したように、いつまでもトロイカの時代ではない。

 岡田氏はポスト・トロイカの最右翼の一人だ。野党時代とは比べものにならない重責を負う政権党の要として、研鑽(けんさん)を積み、次に備えてほしい。

 熾烈(しれつ)な代表選のしこりを解き、党をひとつにまとめあげるのは、誰が幹事長になっても容易ではない。

 国会議員の半数近くが、小沢氏に投票した事実は重い。菅首相の方針に沿って党運営にあたるのは当然として、小沢氏支持層にどう対応していくか、岡田氏の政治的な力量が試される。

 ねじれ国会をどう乗り切るかなど、目先の懸案処理も大切だが、次代を担う岡田氏だからこそ、あえて期待することもある。それは政権交代のある政治をしっかり根づかせるため、長期的な視点に立って党のあり方を点検し、必要な改革を実行することだ。

 首相候補選びである代表選の仕組みを改める。政治資金の配分について透明なルールをつくる。党の日常活動や地方組織を強化し民意を吸い上げる。将来を委ねる若手の育成も急務だ。

 政権交代時代にふさわしい政党の内部統制の仕組みを築き上げることは、与野党を通じた最重要の課題である。

 今回、日本外交の顔である外相が、わずか1年で交代することになった。岡田氏が核軍縮や地球温暖化対策の分野で強い指導力を発揮していただけに、その点は問題がある。

 だが、幹事長として新しい政治文化をつくるため先頭に立つというなら、それもやむをえないこととしよう。

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日印FTA―自由貿易圏へ弾みがつく

 明日の巨大市場と日本が、自由貿易でつながる。12億の人口を抱え高成長を続けるインドと経済連携協定(EPA)を結ぶことが固まった。来月、インドのシン首相の訪日にあわせて正式に決めるという。

 EPAは関税の撤廃・引き下げに加え、投資や雇用のルールも決めるので自由貿易協定(FTA)より幅広いが、要するに拡大版FTAだ。

 インドが日本の工業製品にかけている10%近い関税は、完成車など一部の品目を除き撤廃される。韓国は今年初めにインドと協定を結んでおり、日本企業は韓国メーカーより不利な条件でインド向け輸出をしてきた。ようやく同じ土俵で戦えるようになる。

 日本にとってインドは今や中国に匹敵する大きな直接投資先である。スズキ、NTTドコモ、第一三共などが大型投資を進めている。協定で投資や租税、社会保障のルールが整うことになり、日本企業が進める現地事業の環境は大きく改善する。

 インドとのFTAには、東アジア自由貿易圏という大きな枠組みづくりに向けた一歩としての意義もある。

 日本は自公政権時代に「東アジア包括的経済連携(CEPEA〈セピア〉)」構想を提唱した。日中韓3カ国に東南アジア諸国連合(アセアン)、インド、豪州、ニュージーランドを加えた広大な自由貿易圏の構想だ。

 もともと東アジア貿易圏構想の中心は日中韓3カ国とアセアンだった。だが日本は、著しく経済力を増した中国の台頭で中国主導の経済圏づくりが進むことを警戒した。そこで力の均衡をはかるためにインドや豪州の参加を求めるようになった。

 中国を上回る巨大市場になるとも予測されるインドの存在感は、とりわけ大きい。韓国に続き、日本とインドのFTAでCEPEA構想にはずみがつく可能性がある。

 ただ残念なことに、鳩山政権も菅政権も、通商戦略の構想は物足りない。政府が6月に決定した「新成長戦略」にはアジア太平洋自由貿易圏についての言及はあるが、その前提として実現すべき日中韓、日米などのFTAへの取り組みが弱い。

 インドとの間では大きな問題にならなかったが、これから中国や米国、EU、豪州とFTAを結ぼうとする過程では、農産物の市場開放という難題から逃れられない。菅政権は農家の支持を失うのを恐れて、この課題に向き合っていないように見える。

 米オバマ政権も景気回復の手立てとして輸出倍増計画を掲げ、その環境づくりのためにもアジア地域でのFTAに前向きになっているようだ。日本もここで積極姿勢に転換しなければ、新興市場の成長の果実を取りこぼすことになってしまうだろう。

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