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「ゴルディアスの結び目」の故事は一種の英雄待望論でもあろう。古代、だれにも解けぬ複雑な結び目があって、「これを解く者はアジアの王となる」と言い伝えられていた。その伝説を東方遠征中のアレキサンダー大王が知る▼若い王はその結び目を見るや、解きほぐすのではなく、剣を抜いて一刀両断に断ち切った。とりまく兵隊は歓声をあげたそうだ。民主党の代表選で、小沢前幹事長への支持の裏には、似たような待望論があったとされる。閉塞(へいそく)感を突き破る腕っ節への期待である▼「小沢先生が導いてくださる」といった若手議員の声も聞こえてきたが、結果は、剛腕を押し立てるには至らなかった。菅首相の勝利は、カリスマを頼むより、民意をふまえた、良識的な選択だろう。国会議員の票でも菅さんが競り勝った▼党員・サポーター票の差は歴然だった。ものごとの道理を筋目と言い、文目(あやめ)とも言う。わずか3カ月前に選んだ首相を、党の事情だけで代える理非への、しがらみのない判断が示されたといえる▼戦い終えて、首相は「ノーサイド」を宣言した。だが英国の文人ブレイクに「敵を許す方が、友を許すより簡単である」の箴言(しんげん)がある。内輪のガチンコ勝負、しこりは消えにくかろう。小沢さんの「壊し屋」の横顔が気になるところだ▼当面の注目は人事となろうか。ひとつの時代が終わり、新しい時代を作りあぐねる日本である。問題の結び目は固く、複雑だ。一人の剛腕ではなく、首相の言う全議員による「412人内閣」に、希望をつなぎとめてみる。