沖縄県名護市議選で、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の代替施設受け入れに反対する稲嶺進市長派が過半数を占めた。政府は県内移設方針を変えていないが、民意を重く受け止めねばならない。
名護市議選は、普天間飛行場代替施設の建設先を同市辺野古の米軍キャンプ・シュワブ沿岸部に決めた五月の日米合意後、初めて地元の民意を問う選挙となった。
選挙の結果、定数二七のうち代替施設受け入れに反対する市長派候補が十二議席から十六議席に伸ばし、容認する島袋吉和前市長派は十一議席と一議席減らした。
この結果を受け、稲嶺市長は「過半数の応援団ができたことで、さらに強く政府に対して堂々と言える環境ができた」と、受け入れ拒否を貫く意向を重ねて示した。
名護市民は一月の市長選で、受け入れを容認する現職の島袋氏を退け、反対する新人の稲嶺氏を当選させた。今回の市議選はそれに続く、代替施設受け入れ反対の市民の重ねての意思表示である。
地元住民の強い反対の中で代替施設建設を強行しても、基地の安定的な使用はままならず、日米安全保障体制は脆弱(ぜいじゃく)性を抱え込む。
公有水面埋め立て許可権限を持つ仲井真弘多沖縄県知事も辺野古移設は「非常に難しいと前から申し上げている」と民意に反する許可はできないと重ねて表明した。
十四日の民主党代表選で、菅直人首相、小沢一郎前幹事長のどちらが首相に就いても、辺野古への「県内移設」強行は極めて難しくなったと心得るべきであろう。
菅首相は鳩山由紀夫前首相から県内移設の日米合意も引き継いだが、就任からの三カ月間に、沖縄とのもつれた糸を解きほぐす努力を、どれほどしたというのか。
十日には民主党政権初の「沖縄政策協議会」が開かれた。振興策をてこに県内移設の環境整備を進める腹づもりなのだろうが、札束で頬(ほお)を叩(たた)いて受け入れを迫る旧来の手法はもはや通用しない。
米国防総省が垂直離着陸機MV22オスプレイの日本配備方針を明言したことも気掛かりだ。オスプレイは構造が不安定で開発中に墜落事故を繰り返してきた。
具体的な配備先は明らかでないが、それが普天間飛行場でも辺野古でも、危険性は格段に増す。
仲井真氏は「勘弁してほしいという感じだ」と語った。その思いを共有する。日本政府も、オスプレイを導入できる場所は沖縄にはないと伝えるべきではないか。
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