HTTP/1.1 200 OK Date: Thu, 09 Sep 2010 22:12:05 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:農の未来図 売ることも考えないと:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

農の未来図 売ることも考えないと

2010年9月9日

 農林業センサスの数字は衝撃的だ。農業人口が五年で約22%も減った。農の危機は食の危機。民主党代表選では、戸別所得補償拡大の是非にとどまらず、広い視野から農の未来を示してほしい。

 戸別所得補償は本年度、コメを対象にモデル事業が始まった。

 転作に応じた農家に、十アール当たり一律一万五千円を支払い、米価が下落した場合、差額分を補てんする。政府指定の作物に転作すると、最高八万円が上乗せされる。

 来年度からは畑作や漁業にも段階的に拡大し、畑作には十アール当たり一律二万円を支払う方針で、本年度の五千六百億円を大幅に上回る一兆円近い予算要求を出している。安心して農業を続けられる環境を整えるのが狙いという。

 しかし、そもそもこの制度、参院選の帰趨(きすう)を握る農村票奪取に向けて、小沢一郎前幹事長の肝いりで選挙対策として導入されたという見方が強い。強気の予算要求の背景には「小沢先生の関心事だから」(農林水産省幹部)という安心感があるからだろう。

 農水省が七日発表した農林業センサス(速報値)からは、農家の高齢化の進行と、担い手不足の深刻さが読み取れる。大規模化の兆しはあるものの、前政権による担い手への支援集中政策は、必ずしも実を結んではいない。

 だが、国内農家の疲弊、自給率低下の背後には、国民のコメ離れ、市場の輸入依存といった根本的な問題が横たわる。米価が下がり続ければ所得補償も焼け石に水、「いつまで続けられるのか」と、むしろ不安を訴える農家も多い。例えば米粉米の生産が農家の間で進んでも、安定的な買い手がつかねば農業の展望は開けない。

 一律補償の財源を捻出(ねんしゅつ)するために、国営土地改良事業の予算は本年度四割近く削られた。用水の補修費にも事欠く現場が生まれている。農家を一時的に潤すだけでは、農業の基盤は安定しない。

 民主党代表選で、小沢氏は政権公約、すなわち戸別補償の拡大堅持、菅氏は見直しもありとの立場をとる。しかし、それだけでは日本の農の将来像がわからない。転作した米粉や飼料米を、どこに、どうやって売ればいいのか、有権者の目に触れにくい用水などの生産基盤をどのように維持していくか。

 農家対策にとどまらず、さまざまな角度から見た総合的な農業政策を示してほしい。農業の行方は国民全体の関心事なのだから。

 

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