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2010年9月10日(金)付

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自民再生―野にあるうちに力蓄えて

政権交代のある政治を根づかせるためには、野党第1党である自民党にしっかりしてもらわなければならない。その自民党で、谷垣禎一総裁を支える新しい執行部が発足した。幹事長に石[記事全文]

米国とコーラン―寛容を取り戻すとき

米フロリダ州の小さなキリスト教会が、イスラム教の聖典コーランを焼こうと呼びかけている。今年の9・11の日に「邪悪な宗教」であるイスラムの危険性を知らせるのだそうだ。コー[記事全文]

自民再生―野にあるうちに力蓄えて

 政権交代のある政治を根づかせるためには、野党第1党である自民党にしっかりしてもらわなければならない。

 その自民党で、谷垣禎一総裁を支える新しい執行部が発足した。幹事長に石原伸晃氏、総務会長に小池百合子氏が起用され、石破茂政調会長は留任した。3氏とも50歳代。女性の三役は初めてだ。世代交代を、それなりに印象づける布陣である。

 ただ、顔ぶれを変えただけで安心してもらっては困る。この党を政権交代時代にふさわしい強い政党に鍛え直し、次の総選挙に向け確かな力を蓄えることこそが大切だ。

 自民党は先の参院選で、民主党を上回る51議席を獲得し、与党を過半数割れに追い込んだ。しかし、この勝利は、政治とカネの問題をはじめ、民主党の「敵失」によるものだ。

 比例区でも、全選挙区の合計でも、自民党の得票は民主党を大きく下回った。参院選直後の朝日新聞の世論調査では、64%が、いまの自民党を「政権を任せてもよい政党だとは思わない」と答えている。

 ねじれ国会で出番が増えたと勢いづくのはいいが、自己改革の努力を怠れば、世論の支持は回復するまい。

 新時代の政党像を探る一助として、総選挙で「首相候補」に押し立てる総裁選びのあり方を見直してはどうか。

 総裁選は10日間前後で行われるが、米国の民主、共和両党の大統領候補選びとまではいかなくても、思い切って数カ月に延ばす。長期間にわたる厳しい吟味にさらされることで、候補者は政治的に鍛えられるに違いない。

 総選挙と無関係に、党の事情で首相がたらい回しされることのないよう、首相になった総裁は在任中は代えないというルールも検討すべきである。

 日常的な党運営にも、改革の余地がたくさんある。

 首相候補の下、十分な力量を備えた「影の内閣」をつくり、官僚に頼らない政策立案の術を磨くことが大事だ。

 「脱派閥」をさらに進め、しっかりした執行部が万般にわたって党運営を主導する体制の構築も求められる。

 派閥の連合体とも言われた自民党はかつて、新人の発掘、選挙での支援、当選後の教育、人事や政策の調整など、党運営の隅々まで派閥システムに依存していた。もはや派閥に昔日の勢いはないが、それに代わる内部統制の仕組みが確立しているとは言い難い。

 政権党は日々の政権運営に忙しく、中長期的な視点に立った思い切った党改革に取り組む余裕は乏しい。

 逆境の時こそ、エネルギーをため、将来を期するチャンスである。自民党は、久々の野党経験という好機を逃してはならない。それができなければ、将来政権に復帰しても今の民主党政権の迷走をなぞることになりかねない。

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米国とコーラン―寛容を取り戻すとき

 米フロリダ州の小さなキリスト教会が、イスラム教の聖典コーランを焼こうと呼びかけている。今年の9・11の日に「邪悪な宗教」であるイスラムの危険性を知らせるのだそうだ。

 コーランの教えを信ずる人たちからどれほどの反発を招き寄せるか。だれもが想像できることだ。

 ニュースは世界を駆けめぐり、欧米軍が駐留するアフガニスタンで住民の抗議行動があった。駐留米軍の司令官は米兵への危険が高まると心配した。当然だろう。

 自由で寛容な社会の構築は、米国の建国の原点である。初代のワシントン大統領は「米国は偏狭な価値観を認めず、迫害を助長することもない」との言葉を残している。教会の計画がこの理念に反するのは明らかだ。

 米国とイスラム世界との亀裂が広がることは避けねばならない。教会は今すぐ計画を撤回してもらいたい。

 今から9年前、テロリストの乗っ取った旅客機が、ニューヨークの世界貿易センターに突っ込んだ光景はなお記憶に新しい。背景にあったのは、世界の富と権力の多くを手にする超大国米国に対するイスラム過激主義者の敵意と不信だった。

 アフガンとイラクでの戦争に突き進んだブッシュ前政権は、この反米感情を静められなかった。変化が見えたのは、イスラム世界との和解を掲げるオバマ大統領が就任してからだ。中東和平への仲介に乗り出し、イラクからの米軍撤退にようやくこぎつけた。

 しかしいま露呈しているのは、イスラムとの共存をめぐって対立し、苦悩する米国内部の苦い現実である。

 世界貿易センター近くにイスラム教のモスクを建設する計画が住民の反対で暗礁に乗り上げている。異文化への理解を進める計画だが、9・11テロの被害者家族からは「息子の思い出への侮辱だ」という声が上がっている。

 中東や西アジアを中心に、イスラム教徒は世界に十数億人いるとされる。移民社会の米国にも数百万人が住み、数多くのモスクがある。宗教は異なるが、同じ社会に住んでいるのだ。

 欧州でも、イスラム系移民排斥や女性のベール着用禁止の動きが起きている。社会の少数者への視線が厳しさを増す背景には、失業者の増加といった社会不安の増大もあるのだろう。

 いまやイスラムとの共存なしには、米国はもちろん、世界の安全や繁栄はありえない。

 オバマ大統領は昨年、カイロ大学での演説で、コーランとユダヤ教の律法タルムード、キリスト教の聖書を引用し、「世界の人々はともに平和に暮らすことができる」と呼びかけた。

 狭量な考えを排し、異なる文化を受け入れる寛容と度量をもつ。米社会はそんな伝統を取り戻してほしい。

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