四十代以上には懐かしい鯨の竜田揚げが、給食に復活しているという。全国の公立小中学校で、昨年度に一度でも鯨肉の給食を出した学校は、約18%に当たる五千三百五十五校だった▼復活の背景には、在庫がだぶつく鯨肉事情があるようだ。消費拡大のため、給食用には市価の三分の一の値段で提供しているという。でも、ちょっと変だ▼南極海などでの調査捕鯨は、鯨の生態に関する科学的データを集めることが目的のはずだ。国内で消費できないほどの数の鯨が、調査に必要なのだろうか。目的と手段がごっちゃになっていないか▼先日の本紙特報面に、調査捕鯨船の元船員の声が紹介されていた。「捕りすぎたときはどんどん肉を海に捨てる。捨てるくらいなら捕らなきゃいいのに」。漁師として感じた矛盾を訴えたかったという▼この元船員の内部告発がきっかけとなった事件の判決が、きのう言い渡された。調査捕鯨船の乗組員が自宅に送った鯨肉を運送会社から盗んだとして、窃盗罪などに問われたグリーンピース・ジャパンのメンバー二人に、執行猶予付きの有罪判決が言い渡された▼「鯨肉横領を告発するための正当な行為」との主張は退けられたが、鯨肉の取り扱いに不明朗な点があったことを判決は認めた。調査捕鯨には多額の税金が投入されている。でたらめが横行すれば捕鯨を支持する声もしぼむ。