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2010年9月6日(月)付

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地域主権論争―「粗雑」VS.「乱暴」を超えて

いよいよ、分権改革がすすむのか。なにしろ、首相の座を争う2人が、この国の閉塞(へいそく)感をうちやぶる方策として、そろって分権、地域主権改革を唱えているのだ。[記事全文]

院内感染―衛生対策の基本を大切に

東京都板橋区の帝京大付属病院で、薬の効きにくいアシネトバクター菌による大規模な院内感染が起きた。昨年8月以来、これまでに46人が感染し、少なくとも9人はそれによって亡く[記事全文]

地域主権論争―「粗雑」VS.「乱暴」を超えて

 いよいよ、分権改革がすすむのか。

 なにしろ、首相の座を争う2人が、この国の閉塞(へいそく)感をうちやぶる方策として、そろって分権、地域主権改革を唱えているのだ。

 民主党代表選で、菅直人首相は「中央集権国家の霞が関縦割りのマイナスが、いまの日本の停滞につながっている」と指摘し、国のかたちを根本から地域主権に変えると宣言している。

 小沢一郎前幹事長も「霞が関から権限と財源を地方に移す以外に方法はない」「官僚の既得権に大なたを」と訴えている。両氏の主張はその通りだ。速やかな具体化を期待する。

 前途の険しさは、言わずとしれたことだ。民主党は政権交代を機に、分権を地域主権と言い換えたものの成果は乏しい。「政権の1丁目1番地」のはずが、関連法案はひとつも成立していない。権限や財源を守りたい霞が関の各省の消極姿勢が最大のブレーキだが、これからはねじれ国会という壁も立ちはだかる。

 こんな現実を踏まえて、両氏の見解をつぶさに見れば、またも「掛け声倒れ」に終わりかねない危うさも目についてしまう。

 たとえば、菅首相の場合は改革への本気度が問われかねない。公約に、改革の司令塔の地域主権戦略会議を「新設する地域主権推進会議」と誤って書いてある。この粗雑さはひどい。

 昨年来その戦略会議で、首相はほとんど発言せず、目立った指示もしたことがない。それだけに、単純ミスの誤植が図らずも首相の改革への関心の薄さを象徴したようにも見えてしまう。

 小沢氏の場合は主張が乱暴すぎる。「ひも付き補助金を廃止して一括交付金化する」という政府方針を、新たな財源をつくる手立てとして語り、「首長たちは自由に使えるお金をもらえるなら、現在の補助金の7割でいま以上の仕事を十分やれると言っている」と繰り返している。

 われわれも一括交付金化をすすめ、その使い方を自治体の判断に委ねる大胆な改革を、各省を説き伏せてぜひ実現すべきだと考える。

 だが、そこから数兆円規模の財源を生みだすのは難しいだろう。

 なぜなら、約21兆円ある補助金のうち約17兆円は、医療、介護、生活保護や義務教育などにあてられている。この部分で自治体が合理化し、他の用途に回す余地はわずかだ。残る約4兆円の公共事業では、小沢氏のいう3割程度の削減は可能だろうが、財源をひねりだす打ち出の小づちにはならない。

 そもそも一括交付金化は自治体の裁量枠を広げる一案で、財源を工面する策の柱にすえる発想に無理がある。

 両氏には、首相として各省にどんな指示をするのか、具体的な地域主権改革策を競い合ってほしい。

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院内感染―衛生対策の基本を大切に

 東京都板橋区の帝京大付属病院で、薬の効きにくいアシネトバクター菌による大規模な院内感染が起きた。

 昨年8月以来、これまでに46人が感染し、少なくとも9人はそれによって亡くなった可能性がある。

 病院が院内感染を疑い、過去にさかのぼる調査を始めたのは今年5月中旬になってからだ。保健所への報告も、今月初めだった。

 死者が出ているという情報が病院内で十分に共有されていなかったことも明らかになっている。初動が遅れたばかりか、あまりに危機感が欠けた対応だったといわざるを得ない。それが被害を広げた可能性も高い。

 この病院は高度な医療を行う特定機能病院だ。8月に厚生労働省と都の定期検査を受けた。その際、感染防止の態勢が弱いという指摘を受けながら、院内感染について報告しなかった。首をかしげたくなる対応だ。

 徹底的に態勢を見直すべきだ。

 全国の病院でも、感染防止の態勢を急いで再点検してほしい。

 こうした薬の効きにくい細菌は世界的にじわじわ広がっており、日本でも感染例が相次いでいる。

 2008年秋から翌年の1月にかけて福岡市の福岡大病院で、今回と同じ細菌に26人が感染して4人が死亡する例があり、厚労省は警戒を呼びかけた。今年2月、愛知県の病院でも起きた。

 細菌との戦いは予断を許さない。最初の抗生物質ペニシリンの登場以来、すり抜けて耐性を獲得した細菌と、強力な抗生物質の開発競争が続いてきたが、薬の開発がなかなか追いつきにくくなってきたのが現状だ。

 主要な抗生物質のどれもが効かない多剤耐性と呼ばれるタイプや、効く薬が全くないスーパー耐性菌と呼ばれるものまで出てきた。

 アシネトバクター菌は土の中などにいるありふれた細菌で、健康な人にはまず病気を起こさないが、がんなどで免疫力が弱った人に感染すると、肺炎や敗血症などの重い症状を起こすことがある。普通なら抗生物質が効くが、今回のように多剤耐性になると、ほとんどの薬が効かなくなる。

 大切なのは、すばやい対応だ。千葉県の船橋市立医療センターでは昨年、このスーパー耐性菌が見つかった。ただちに院内感染対策チームを招集して病院中に警報を発した。患者を個室に移して病院全体の衛生対策を徹底させた。それが功を奏した。

 人工呼吸器などの医療機器の管理やせっけんでの手洗いなど、基本的な衛生対策の徹底が大切なことは、過去の多くの事例が教えている。

 感染がわかったら、院内で、そして地域で、情報を共有して取り組む。そんな基本も再確認しておきたい。

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