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天声人語

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2010年9月5日(日)付

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 「チリメンモンスター」なるものが評判だと聞いて、海産物店から取り寄せてみた。チリメンジャコにするイワシの稚魚と一緒に混獲される、他の魚介の稚魚のことだ。タコやアナゴなど異形の面々が「怪物」よろしくジャコの中から顔を見せている▼普通は取り除かれるのだが、混ざったまま売ると人気になった。届いた袋にはタツノオトシゴもいて、二十数種を数えた。ご飯にのせて食べながら命のゆりかごを思う。〈海よ、僕らの使ふ文字では、お前の中に母がゐる〉。三好達治の詩の一節が頭に浮かんだ▼その「母なる海」の名に、日本の海は恥じないようだ。10年がかりの国際調査で約3万4千種の生き物が認められたと、先ごろ報じられた。哺乳類(ほにゅうるい)からバクテリアまで、確認された海の生物の14.6%にあたる。世界の25海域で最も多かった▼調査した日本の排他的経済水域の容積は海全体の0.9%だから、そこで14%強とは多彩な生物相だ。変化に富む海底地形や気候が命を育むのだという。かけがえのない授かりものであろう▼とはいえ無尽蔵ではない。別の調査では、日本周辺の水産資源はマサバなど84種の4割強が「低位」にあるという。秋の味サンマの不漁も伝えられる。海水温が原因とされ、資源の減少ではないそうだが、海に甘え続ければ痛い目にも遭いかねない▼〈秋刀魚(さんま)喰(く)ふ男のくらし隙(すき)だらけ〉阿部完市。ここは隙のない環境保護と資源管理で日本の海を守りたい。食べる魚ばかりでなく、ヘンな生き物もいてこその豊饒(ほうじょう)なのだと肝に銘じながら。

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