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9月4日付 編集手帳

 ミトリダテスは毒物の収集家として歴史に名をとどめている。紀元前、黒海南岸にあったポントス王国の王である。少量ずつ飲んで耐毒性を養い、ついにはどんな毒にも不死身の体を得たと伝えられる◆柳沼重剛氏の『語学者の散歩道』(岩波書店)によれば、ローマとの戦争に敗れた王は服毒自殺を試みたが、死ねない。まわった毒で手がしびれて自刃もできず、従者に頼んで殺してもらう悲惨な最期であったらしい◆そういう人間は現代にはいまいが、細菌のなかには不死身とはいわないまでも、王に似た体を手に入れる者もいる。細菌にとっての毒物とは抗菌薬である◆抗菌薬が多用される病院内では、薬に耐性をもつ菌も増えやすい。帝京大学医学部付属病院で入院患者46人が、ほとんどの抗生物質が効かない「多剤耐性アシネトバクター」と呼ばれる細菌に感染した。27人が死亡し、うち9人は感染と死亡の因果関係が疑われている。なぜ、感染がここまで広がったのか、院内感染対策に漏れはなかったか、病院は検証を急ぐべきだろう◆細菌界のミトリダテスたちに、これ以上の乱暴を許してはならない。

2010年9月4日01時13分  読売新聞)
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