民主党代表選で、遅々として進まない地域主権改革が争点に浮上している。小沢一郎前幹事長が「一括交付金」の導入を強調しているからだ。国と地方の役割を考える、いい機会になってほしい。
小沢氏の政策はおおむね地方に手厚い。一括交付金は、衆院選マニフェストを実行するための財源捻出(ねんしゅつ)策でもあり、一石二鳥と言いたいのだろう。
各府省が使い道を決める「ひも付き補助金」には、縦割りの弊害である無駄遣いが多い。これを自治体の裁量で自由に使える一括交付金に転換すれば、無駄が減り財源が浮くというわけだ。
その典型として例示したのが、福井県内のスキー場の話。融雪装置の補助金をもらう条件としてスキー場を建設したが、一度も利用されず廃止されたという。
「親しい首長に聞くと、本当に自由に使えるなら、今の補助金の半分で十分やっていける」と小沢氏は強弁する。だが、本年度予算で二十一兆円ある補助金をどれだけ削減できるのかは示されない。
一括交付金は、菅直人内閣で六月に閣議決定された地域主権戦略大綱の目玉でもある。そもそも地域主権は鳩山由紀夫前政権の「一丁目一番地」だったのに、財政再建を優先する菅政権下では薄れてしまった。
実際、大綱では「地域が自己決定できる財源」との表現が消え、制度づくりは「関係府省とともに検討」との文言が加わった。
来年度からの導入を掲げても、概算要求には反映されなかった。ひも付きの既得権益を守りたい霞が関の巻き返しは強まるに違いない。さらに、大綱に盛り込まれた「国の出先機関の原則廃止」をめぐり、抵抗は激しくなりそうだ。
本来、一括交付金の目的は自治体の自由度を高めること。自治体側も期待を寄せるが、財源捻出のため地方に回る総額が減らされるとは思っていない。ただ、国の財政難を考えたとき、移譲される「財源待ち」の受け身から、「地域のことは任せろ」ぐらいの能動的な姿勢へ、発想を転換すべき時に来ているのではないか。
討論会で小沢氏は「大なたを振るう勇気で」と剛腕をちらつかせた。一方の菅首相は地域主権の“元祖”を自任した上で「どこまで踏み込めるかだ」と述べた。官僚と向き合ってきた実感だろう。
国のかたち、住民の意識を変える地域主権は政治主導で成し遂げる大改革で、本気度が問われる。
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