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先の小欄で、宿題に触れつつ「暑すぎる晩夏」を嘆いたところ、東京の靖子さん(66)から珍しい物が届いた。1954(昭和29)年、小学4年の夏につけた絵日記である。娘さんの結婚を前に、納戸を整理していて見つけたそうだ▼栃木県小山(おやま)市での古き良き夏休みが、色鮮やかに、楽しく描かれている。「驚いたのは几帳面(きちょうめん)に毎日書いていることと、気温です」と靖子さん。小山といえば、今や夏の高温で知られる「北関東亜熱帯」の一角だが、日記の記録は高い日でも33度だった▼うらやましい「涼しさ」だ。その後の高成長で底上げされたのだろう。教員も経験した日記の主は、残暑の中で迎えた新学期を「勉強に打ち込めるかしら」と気遣う▼気象庁によると、6〜8月は19世紀末に始まる観測史で最も暑かった。都市化の影響が少ない地点の平均でこれだから、列島ごと熱の中だったらしい。9月も「夏」が続き、都心では熱帯夜の連続記録が止まらない▼さて半世紀前の靖子さん。感心したのは早寝早起きだ。起床は6時前後、就寝は8時過ぎが多い。テレビの不在にもよろう。ちなみにベネッセの「小学生の夏休み調査」(09年)では、4年生の起床は平均7時11分、就寝は10時。高学年ほど寝坊で夜更かしになる▼絵日記の初日に、〈白連車〉でお祭りに行きましたとあった。自転車の書き損じが愛らしい。わずかにその夜や花火大会の日だけ、寝るのが11時を過ぎた。めったにないことだから思い出になる。このゆだる夏も、あまねく心の絵日記に刻まれただろう。