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9月3日付 編集手帳

 夏目漱石『吾輩(わがはい)は猫である』で名前のない猫が語る。〈善く鳴く(やつ)で、吾輩から見ると鳴くのと猫にとられるより(ほか)に天職がないと思われる(くらい)だ〉(岩波文庫版)。ツクツクボウシに触れた一節である◆もう一つの天職を忘れては気の毒だろう。残暑に幕を引く“晩夏の使い”でもある。秋風の立ちそめるころ、少々せわしない声で季節の変わり目を告げる◆気象庁によれば、この夏(6〜8月)は過去113年間で最も暑かったとか。平年との気温差は北日本2・7度、東日本2・2度、西日本2・0度…と、酷暑に地域の別はない。秋風を待ちきれずに鳴くツクツクボウシも勝手が違うのか、心なしか声に張りがないようである◆歌人の竹山広さんに、その(せみ)を詠んだ一首がある。〈水ひかる上を渡りき万事窮す万事窮すと蝉の鳴けども〉。なるほど聞きようで、そうも聞こえる。民主党の代表選挙で、それぞれ相手の弱点を突くべく舌戦に火花を散らす候補者お二人には、きっと縁起でもない鳴き声だろう◆「政治とカネ」で守勢に立たされた人の耳には、〈つくづくオアシ〉と聞こえているかも知れない。

2010年9月3日01時41分  読売新聞)
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