民主党代表選では、普天間飛行場の返還など、沖縄県に約75%が集中する在日米軍基地問題も大きな争点だ。菅直人、小沢一郎両候補は、県民の基地負担軽減に向けた道筋を語らなければならない。
日米両政府は、普天間飛行場を名護市辺野古崎地区と隣接海域に移設することで合意しており、八月三十一日には滑走路を二本配置する「V字案」と一本の「I字案」を併記した専門家協議の報告書を公表した。
しかし、過重な基地負担に苦しむ沖縄県民の多くは、どちらの案でも「県内移設」自体に反対しており、普天間返還をどう実現し、負担を軽減するかは、どちらが首相に就いても難題であり続ける。
日本記者クラブ主催の討論会で菅氏は、鳩山由紀夫前首相から「引き継ぐ」とした県内移設の日米合意が「沖縄の皆さんにとって受け入れがたい合意であることは重々承知している」と認めた。
では、日米合意を堅持したままどうやって普天間返還を実現するのか。沖縄県民が受け入れ困難としている県内移設をこのまま進めようというのか。
菅氏は、北部訓練場や嘉手納飛行場以南の返還、グアムへの海兵隊移転などを優先的に進め、基地負担軽減を図る考えを示したが、県内移設が前提では抜本的な負担軽減にはならないのではないか。
小沢氏は日米合意を「尊重するが、現実に実行に移すことは非常に難しい」として、「沖縄県も米政府も納得できる知恵を出すために、もう一度話し合いをしたらどうか」と述べた。
沖縄の負担軽減に向け、日本政府が沖縄県や米政府と協議を続けるという姿勢自体は評価できる。
しかし、小沢氏は一日の会見で「今、自分の頭にあることを言うわけにはいかない」と腹案があるような口ぶりだったが、討論会では「具体的に案を持っているわけではない」と否定した。具体策がなければ、掛け声倒れに終わる。
小沢氏はかつて極東の米軍の存在を「第七艦隊で十分」と発言し、討論会でも「軍事技術の発達で前線に大きな兵力をとどめておく意味はない」と、海兵隊が沖縄から撤退しても抑止力は維持されるとの考えを示した。
小沢氏は、自らの安全保障政策の全体像を語り、菅氏との違いを鮮明にする必要がある。
代表選は始まったばかりだ。安全保障についても論議を深め、沖縄の基地負担軽減につながるアイデアを競う場にしてほしい。
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