民主党代表選で菅直人首相と小沢一郎前幹事長は、ともに日本経済の再生・復活を打ち出した。雇用拡大をどう実現するのか。予算の組み替えをどう実行するのか。両者は具体策を明示すべきだ。
菅氏は立候補に当たって発表した政策ペーパーで「雇用を起点にした国づくり」という政策路線を打ち出した。記者会見でも「一に雇用、二に雇用、三に雇用」と繰り返している。
だが、聞けば聞くほど根本的な疑問がわいてくる。その雇用をどう増やしていくのか、具体策が見えてこないのだ。
労働者を雇用する主役は民間企業だ。企業活動が活発化して、結果的に雇用が増える。だが「雇用が拡大しないとデフレを脱却できない」といった発言が示すように、菅氏は雇用と経済活性化の因果関係を逆に理解しているようだ。本当は「デフレを脱却しないと雇用が増えない」のである。
こういう発想で政策を立案すると、雇用を守るためにはなんでもありになりかねない。雇用確保が税金投入の大義名分になって、新陳代謝を阻害し肝心の経済活性化を損なう事態さえ懸念される。
政府の役割は民間が創意工夫し、リスクをとって活動できるように支援することだ。まさか政府が雇用を増やせばいいと考えているのではあるまい。では産業活性化のために、なにをするのか。ここは重要な論点である。
菅氏はスローガンではなく、政策の中身を語るべきだ。
小沢氏は「国のひも付き補助金を地方への一括交付金に改める」「高速道路の建設は国が建設費を負担して都道府県が自ら行う」などの政策を表明した。
その鍵になるのは「国家予算二百七兆円の全面組み替え」だ。組み替えは民主党が昨年の総選挙で打ち出したが、結果的にほとんど実現できなかった。
たしかに政府が一律に決めたルールで予算を配分する仕組みは硬直的で、無駄や非効率を生む。北海道でも九州でも「校舎は南向きに」「廊下の幅はこれこれに」といった例が象徴的だ。
だが、実際に予算を組み替えるには多くの制度改正が不可欠であり、法律も改正しなければならない。与野党の多数派が衆参両院で逆転したねじれ国会の下で、どう実現していくのか。
選挙後の国会対応を語りにくいのは理解できるが、その道筋が見えてこないと組み替え話もまた絵に描いたもちになりかねない。
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