民主党代表選が告示され、菅直人首相と小沢一郎前幹事長による論戦が始まった。日本をどんな国にしたいのか、国民生活をどう立て直すのか。政策論争を通じ、どちらが首相に適任かを見極めたい。
一騎打ちに臨む菅、小沢両氏はそれぞれ「政見」を発表し、共同で記者会見に臨んだ。十四日の投開票までに東京、大阪、札幌では演説会も開かれる。自らの理念・政策を率直に語ってほしい。
最大の争点は、子ども手当や高速道路無料化、農家の戸別所得補償など二〇〇九年衆院選マニフェスト政策の実現を引き続き目指すのか、一部修正するのかと、消費税だろう。
菅氏は会見で「できるだけ誠実に実行すると同時に、どうしてもできないことは、その理由を国民に説明し、理解をいただくことが必要だ」と、修正もあり得るとの立場を表明した。
消費税を含む税制抜本改革については、社会保障改革と一体で議論するとしているが、社会保障の設計図を先に描かなければ、具体的な財源論議にも入れまい。
これに対し、小沢氏は会見で「衆院選で約束したことを着実に実現することが大事だ」と述べ、政見には子ども手当は一二年度からマニフェスト通り月額二万六千円を支給すると明記した。
意欲は分かるが、どうやって財源を確保するのかを知りたい。
小沢氏は消費税論議の前に、行政の無駄を徹底的に省き、一般、特別会計合わせて二百七兆円の予算組み替えで捻出(ねんしゅつ)するというが、無駄排除の難しさは、昨年の事業仕分けをみれば明らかだ。
無駄をどうなくすのかの具体策を語らなければ説得力を欠き、マニフェストも空証文に終わる。
「政治とカネ」の問題にも注目したい。小沢氏の資金管理団体の不透明な土地取引は、検察は不起訴としたが、検察審査会の結論次第では強制起訴の可能性も残る。
小沢氏は「国家権力による一年あまりの強制捜査を受けたが、結果として実質的な不正はなかった」と述べたが、説明を尽くさないと、検察審査会に参加する一般国民も納得しまい。
代表選は一政党内の選挙だが、首相を選ぶ選挙であり、党員以外の国民も無関心ではいられない。
政策論争を深めるためにも、記者会見で質問に答えたり、演説するだけでなく、両候補の討論会も設け、意見・質問を直接ぶつけ合う機会を多くしたらどうか。あえて提案としたい。
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