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「古い政治文化」か、「新しい政治文化」か。これが民主党代表選の重要な論点に浮かび上がってきた。政権交代後も迷走の続く日本政治にとって避けて通れないテーマである。[記事全文]
急成長するインドは近い将来、原子力大国になる。市場規模は何十兆円とも言われる。地球温暖化防止に、インドの原発導入はプラスに作用するとの期待もある。こういう状況のなかで、日本は、核不拡散条約([記事全文]
「古い政治文化」か、「新しい政治文化」か。これが民主党代表選の重要な論点に浮かび上がってきた。
政権交代後も迷走の続く日本政治にとって避けて通れないテーマである。
菅直人首相と小沢一郎前幹事長にはより深く掘り下げて論じてほしい。
きのうの日本記者クラブの公開討論会では、菅氏が議論を仕掛けた。
「『古い政治』は二つある。ひとつはカネの問題。もうひとつは数の力。小沢さんの政治のあり方は、カネと数の原理が色濃くある」
そして、ほかの政党とも、国民との間でも政策を巡る議論を重ね、合意を形成する「熟議の民主主義」を確立し、新しい政治文化をつくっていきたいと語った。
小沢氏を単純に「古い政治文化」の体現者と決めつけるわけにはいかない。政治改革を主導してきた急進的な改革者の顔も併せ持つ。
ただ、自民党田中派以来の「数は力」の体質は否定できない。国政選挙での公認権や党の資金も背景にして、巨大なグループを築く。政策調査会を廃止し、自身が率いる幹事長室に権限を集中させる。そんな手法は、熟議の民主主義とは対極にある。
公開討論会で小沢氏は、矢継ぎ早に問いただされた。
小沢氏が首相になったら、連立を組み替えるのか。検察審査会で再び起訴すべきだと議決されれば、首相として自身の起訴に同意するのか――。
どの質問にも「勝つかどうかわからない」などとして、はっきりと答えない。説明を嫌い、白紙委任を求める体質の表れと言われても仕方がない。
官僚主導の政治から、政治主導の政治へ。「政」と「官」との関係のあり方については、両氏の基本的な考え方に大きな違いはあるまい。
両氏を分かつのは、「政」の中での権力観だろう。
クリーンでオープンな民主党を、と唱える菅氏は「全員参加」型の意思決定を唱える。
これに対し小沢氏は、明らかに権力集中型、トップダウン型である。
かねて、みずからのよって立つ「政治集団を強化、拡大」すること、「権力の集中」や「権力の行使」をためらわないことの必要性を繰り返し説いてきた(「日本改造計画」)。
小沢氏の政治遍歴を貫いてきた行動原理とでもいうべきものだ。
政治はプロセスよりも結果である。そんな考えもあるに違いない。
しかし、国民に「痛み」を求めざるをえない時代、丁寧な説明や合意形成を軽んじて本当に政治が進むのか。
この20年あまりの日本政治に大きな位置を占めてきた「小沢氏的なるもの」の是非が、代表選を通じ最終的に問われることになる。
急成長するインドは近い将来、原子力大国になる。市場規模は何十兆円とも言われる。地球温暖化防止に、インドの原発導入はプラスに作用するとの期待もある。こういう状況のなかで、日本は、核不拡散条約(NPT)に入らずに核武装したインドと原子力協力協定の締結交渉を始めた。
すでに米仏ロはインドとの協定を結び、商談も進む。だが、非核外交を重視する日本まで協定締結に動けば、NPTへの信頼がますます弱まるのではないか。そんな懸念が内外に強い。経済と非核外交の折り合いをどうつけるのか。8月下旬に訪印した岡田克也外相が、ひとつの原則を示した。
インド外相との会談で、「インドが核実験を実施した場合には、日本は原子力協力を停止せざるを得ない」との考えを伝えたのだ。包括的核実験禁止条約(CTBT)の早期署名・批准など、インドの核軍縮・不拡散に向けた取り組みを注視する姿勢も示した。
日本としては、当然の立場である。非核外交の視点から、インドとの協定に意義を見いだすとすれば、協定を通じて、できる限りインドを「核のない世界」に向けた国際的枠組みに参画させていくことだ。その目的から遠い合意しか望めないなら、決裂もやむなしとの覚悟が必要だろう。
現実には、インド側の態度は硬い。核兵器国の中国や、やはり核武装したパキスタンなど、周辺で競合関係にある国がCTBTを批准していないことを理由に、核実験の手を縛ることを拒んでいる。交渉は難航が予想される。粘り強く臨み、最善の解を見いだすしかない。
原子力協定の問題は、8月末にさいたま市で各国の政府と民間の専門家が意見を交わした国連軍縮会議にも影を落とした。インドとの協定が、中国とパキスタンの原子力協力を正当化し、南アジアで核軍拡競争を再燃させかねない。兵器用核分裂物質生産禁止条約の交渉にパキスタンが反対する背景にも、この問題がある。そんな指摘が相次いだ。
会議に出たインドネシア外務省高官は「NPT未加盟でも原子力協力を得られるのなら、非同盟諸国の多くはNPT順守への意欲が当然そがれる」と不満を語った。テロを含む新たな核拡散を抑える輪が緩みかねない。
米国の民間シンクタンクの核問題専門家は「日本は、インドが必要な多くの原子力機器を持つ。その強力なテコを使って、日本が望む強い協定をインドに求めるべきだ」と期待を示した。
インドとの第2回の交渉が近く開かれる。今月下旬には、日本などが音頭をとる非核国の外相会議がニューヨークで開かれる。日本の非核外交の足場を崩さぬよう、確固たる決意でインドを説得していく必要がある。