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9月2日付 編集手帳

 横綱昇進が決まり、使者の到着を待つ。力士ならば誰しも天に舞う至福の時間、その人は「困るよ…断れないのか」、そう語って頭を抱えていたという◆「昭和の名横綱」初代若乃花の花田勝治さんである。大関は負け越しても、関脇で相撲がとれる。横綱には引退しかない。短命横綱に終われば両親や兄弟姉妹を養えなくなる…。その場面に立ち会った相撲ジャーナリストの杉山邦博氏が『土俵の真実』(文芸春秋)に書いている◆子供が戯れに()みついても、つるりと滑って歯が立たないほど肌の張り切った腕。土俵の砂を噛みすぎてカギ形に曲がった足の指。“土俵の鬼”花田さんが82歳で死去した◆子供の頃、童謡の―お花をあげましょ桃の花…を「若乃花」と替え歌にして歌った記憶がある。軽量ながら真っ向勝負を挑み、勝つ姿に、どれだけ多くの人が励まされたか。たしかに昭和という時代がくれた花だった◆「貧乏が俺を横綱にしてくれた」と語った人は、賭博に散財した後輩たちをどう見ていただろう。偉大な後ろ姿に、「ありがとう」よりも先に「ごめんなさい」と言わねばならないのがつらい。

2010年9月2日01時33分  読売新聞)
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