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英語ならば「ファイアワーク(火の作品)」と正当に表現される花火も、仏語では「フー・ダルティフィス(策をろうした火)」と身もふたもない。民主党の代表選をめぐる土壇場の調整劇に、異形の川柳を一つ思い出した。〈花火 これ以上の嘘(うそ)はありません〉福田文音▼首相の座を目ざし、二手から派手に上がった尺玉である。ところがそれは、鳩(はと)の羽ばたきで消えかける程度の火だったのか。永田町に生まれた「民主の森」まで焼いてなるものかと、最後までいじましい談合を見せられた▼菅首相、小沢前幹事長とも不安があるのだろう。一方は相手の組織力におびえ、一方は世論の不人気、それを見た新人議員の動揺が気にかかる。だが、ポストの裏取引は恥の上塗りでしかない▼代表選はこうして、カブトムシとオオクワガタの、森を二分した戦いと決まった。ツノかアゴ、どちらかが必ず折れるガチンコ勝負である。周りを群れ飛ぶカナブンの羽音は、ブンブン分裂と聞こえなくもない▼自著によると、菅氏はかつて、民主党に合流する小沢氏に釘(くぎ)を刺したそうだ。「相談して合意したことを一緒にやるのであって、俺(おれ)の言う通りにしたら床の間に座らせてやる、任せておけというのはダメです」。あれから7年、主客交代の感が強い▼民主党に息づく同好会的な文化と、小沢氏が旧田中派から持ち込んだ戦闘集団の手法。両者の激突に遺恨も絡み、水膨れの党に一つの区切りがつく。国民の思い、厳しい経済とかけ離れた政争。その熱さと寒さは、冬の花火を思わせる。