HTTP/1.1 200 OK Date: Mon, 30 Aug 2010 21:12:19 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:作家の加賀乙彦さんは、精神科医として数多くの死刑囚と接した…:社説・コラム(TOKYO Web)
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【コラム】

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2010年8月30日

 作家の加賀乙彦さんは、精神科医として数多くの死刑囚と接した東京拘置所の医官時代の経験を基に、小説『宣告』を書いた。その中に、翌日の執行を告げられた死刑囚が、家族と最後の対面をする印象的な場面がある▼母親がちらしずしやてんぷらを急いでつくり、重箱に詰めて持ってくる。ほんの一口しかつまめない死刑囚は老いた母の肩をたたき、最後の言葉を交わす▼実話かどうかは分からないが、加賀さんが勤務した一九五〇年代、執行は前日に本人に告げられ、親族との面会が許されていた。その後、執行直前に自殺した死刑囚がいて、現在は当日朝の告知だ▼法務省は、執行した死刑囚の名前すらつい最近まで公表せず、死刑執行を徹底した秘密主義に押し込めていた。拘置所から、家族に連絡が届くのも執行がすべて終わった後だ▼その秘密のベールは、どれぐらいはがされたことになるのだろうか。先週、東京拘置所の刑場が報道機関に初めて公開された。死刑囚が乗る踏み板、それを開く三つの押しボタン−。いやおうなしに、死刑制度の是非を考えさせられる▼加賀さんによると、いつ来るか分からない死刑執行の恐怖から拘禁ノイローゼになる死刑囚が多かったという。裁判員が究極の刑罰と向き合う日も近い。執行する選定基準、死刑囚が受けている処遇など裁判員が知りたいことはたくさんある。

 

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