HTTP/1.1 200 OK Date: Mon, 30 Aug 2010 00:12:16 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:サンマの不漁 わずか2度の温度差で:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

サンマの不漁 わずか2度の温度差で

2010年8月30日

 「気温上昇を二度以内に」は、温暖化対策の合言葉だが、その温度差を実感するのは難しい。しかし、海水温の二度上昇で庶民の味方のサンマが不漁。そう言われると、温暖化の苦さが身に染みる。

 たった二度でと、誰もが思う。

 この夏の暑さは格別で、三五度の気温が三七度になっても、ものすごく暑いことには変わりがないと思ってしまう。しかし、猛暑日という新しい言葉にもうすっかり慣れてしまったことが、この夏の暑さ同様、異常なことではないのだろうか。

 秋の味覚、サンマの不漁が続く。夏サンマの主力産地、北海道東部の根室や釧路の沖合に、群れが現れない。

 サンマは群れをなして海表面を回遊する。海水温の変化に敏感だ。一三度ぐらいを好むという。だが、今年は北海道東部沿岸では一五度以上に上り、サンマの群れは“涼”を求めて東の海域へ移動した。漁場が、例年より千キロから二千キロもずれてしまった。根室や釧路からわざわざ船を仕立てても、採算がとれる距離ではない。このため、例年なら新サンマが売れ筋になるこの時期の漁獲が激減し、首都圏では一匹百円、安ければ五十〜六十円になるはずの小売価格が、四百円という高値を付けた。

 影響はサンマだけにはとどまらない。北の海では秋サケ漁も不調のきざし、このままだと、イクラや正月の新巻きザケの値段にも影響が出そうという。

 マイワシが減ってカタクチイワシが増える魚種交代も、海水温の差が原因らしい。今年はマイワシが季節外れの豊漁で、大羽(おおば)と呼ばれる大型が関東でよく取れる。ところが小ぶりのイワシが足りないと、それを餌にして脂を付ける戻りガツオがやせてしまうからややこしい。海は広いし大きいが、気象条件と生き物が微妙なバランスを保っているのがわかる。

 海の中だけではない。夜の気温が一度上がると、コメの収穫量が一割減るとの研究結果もある。わが国が減反に追われているうちに、世界的にはコメ不足に向かう恐れは強い。

 気候変動が生物の多様性をかき乱し、生物多様性の混乱は、私たちの食卓に鋭く跳ね返る。

 「二度」の変化は侮り難く、決して人ごとではあり得ない。気候変動や生物多様性も、科学や政治の課題である前に、日々の暮らしの問題なのだと、サンマやイワシがあらためて教えてくれている。

 

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