HTTP/1.1 200 OK Date: Sat, 28 Aug 2010 20:13:58 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:刑場公開 死刑を考える一歩に:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

刑場公開 死刑を考える一歩に

2010年8月28日

 死刑を執行する「刑場」が報道機関に公開された。裁判員の市民がいずれ極刑判断を迫られる日が来る。もはや人ごとで済まないだけに、さらに刑の実態について情報公開を進めてほしい。

 遺言を聞かれ、お祈りを受ける教戒室、ボタン室、執行室、立ち会い室…。写真と映像を伴い、刑場が初めて公開された意味は小さくない。国民にはこれまで全く秘密のベールに包まれた空間だったからだ。

 そもそも死刑執行の情報自体も長く国民には知らされてこなかった。執行日と人数の公表は一九九八年からで、死刑囚の氏名公表も二〇〇七年からと新しい。秘密主義が徹底されてきたといえる。

 今回の刑場公開は、千葉景子法相が七月下旬、死刑執行に立ち会った際、その意向を表明したのがきっかけだ。だが、裁判員制度とも直結するテーマでもある。

 現段階では裁判員裁判で死刑判決を出したケースはないが、今後はその可能性は濃厚で、国民自身が死刑制度そのものを詳しく知らねばならないはずだ。もはやタブー視できない時代ともいえる。人ごとで済まないという認識をまず深めたい。

 さらに死刑囚は執行までの長い間、どう処遇されているのか。反省の心をどう示しているのか。検事がどのように裁判記録などをチェックしているのか。執行する死刑囚をどう選んでいるのか。あまりに不明なことが多すぎる。法務省はもっと実態を知らせるべきではなかろうか。

 世界各国では廃止・停止の国が多数を占め、大きな潮流になっている事実がある。欧州連合(EU)の加盟条件には死刑廃止が加わっており、国連も総会で死刑廃止条約を採択している。

 誤判の現実や、死刑の犯罪抑止力が実証されていないことなどが、背景にあるとされる。〇八年には国連の人権委員会が死刑制度の廃止を日本に勧告している。国際世論の圧力が強まっている現実をどう受け止めたらいいのか、それも制度を考える課題だ。

 確かに内閣府の世論調査で85%超が「死刑もやむを得ない」と容認しており、犯罪被害者遺族らの声も尊重されねばならない。

 だが、市民が重い判断を背負う時代は、制度の存置・廃止の論議から逃れることはできまい。今回の刑場公開が単なるパフォーマンスにとどまらず、議論を深める第一歩になることを期待する。

 

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