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8月28日付 編集手帳

 炭坑労働者「伴野」が仲間の前に梅干しの種を差し出す。弁当で食べた(ざん)(がい)である。「しゃぶってると自然とツバが出て(のど)が渇かねえだ。年寄りのシャブリかすで気の毒だが、辛抱しな」◆50年ほど前に放送されたNHKのテレビドラマ『どたんば』(作・菊島隆三)のセリフを脚本から引いた。落盤事故で地下に孤立した男たちを描いている◆梅干しではないにせよ、(いたわ)りの心と励ましの言葉を持ち寄って恐怖に耐えているだろう。南米チリの鉱山で起きた落盤事故により、作業員33人が地下700メートルの避難所に閉じこめられて3週間が過ぎた◆避難所内の気温は推定35度、湿度85%、作業員の多くは脱水症状に苦しみ、体重が平均10キロ減ったと報じられている。救出坑が通じるのは3〜4か月先という。「世界中があなたのことを心配してるわ」。地上と避難所を結ぶ穴を通じ、妻のひとりは夫を手紙で励ました。忘れられていない――極限にいる人には、まなざしも生きる糧だろう◆地球の裏側にいて梅干しの種ひとつ差し出せぬ身ながら、まなざしの送り手でいようと思う。全員が無事に生還するその日まで。

2010年8月28日01時13分  読売新聞)
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