映画『蒲田行進曲』は、先月亡くなった作家つかこうへいさんの作品が原作の傑作である▼興行界の実力者の娘との結婚話が持ち上がった映画スター銀ちゃんが、自分の子を身ごもった恋人小夏を子分の大部屋役者ヤスに押し付けるという設定。二人は結婚し、ヤスは懸命に小夏に尽くすが、放屁(ほうひ)した時、臭そうにした小夏をヤスが怒鳴りつける場面がある▼銀ちゃんがおならをした時はうれしそうにしていたではないか。こちらは全部のみ込んで籍まで入れたのに…というわけで、確かこんな台詞(せりふ)を吐く。「戸籍は屁(へ)よりも軽いのか!」▼まさか、そんなことはないと思うが、最近、戸籍の“重み”に疑問符がつく事態が続いているのは確かだ。幕末生まれの人が戸籍上「生存」しているようなケースが相次ぎ判明し、ついに、長崎県では存命なら二百歳という事例までも▼ただ、より深刻なのは戸籍上だけの“長寿”でなく、住民登録もあって年金支給されている場合である。厚労省が八十五歳以上のうち八百四十人だけを抽出で調べてみたら、死亡や行方不明の二十三人に支給されていたという。年金受給者の総数は約四千万人。全部調べたら一体どこまで…▼年金詐取のケースもあり、一概に行政の怠慢をいうことはできない。ただ、「お上のやること」への信用、その“重み”がまたまた傷ついたのは間違いない。