HTTP/1.1 200 OK Connection: close Date: Fri, 27 Aug 2010 03:13:36 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Age: 0 東京新聞:地方自治を考える 市長と議会という両輪:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

地方自治を考える 市長と議会という両輪

2010年8月26日

 地方自治は民主主義の学校と言われる。市長と議会が対立する名古屋市では、議会の解散を求める署名集めがいよいよ始まる。ここから何を学ぶべきか。

 対立の根をまず見てみよう。

 民主推薦の河村たかし市長(61)が五十一万票、得票率六割で当選したのは昨年四月だった。これまでの政党“相乗り”市長と議会のなれ合いのような市政とは決別だ。そう期待していたのに、行き詰まってしまった。

◆10%減税は1年限りに

 一番の公約である市民税10%減税は、市の全会計(約二・五兆円)で市債発行残高が三兆円を超す財政難を理由に、議会が一年限りに修正。年千六百万円の議員報酬を半分にしようという市長案は「議会が決めること」とあっさり否決した。

 与党の民主会派も含め、市議会は「オール野党」状態。市長の出した市の中期戦略ビジョンを議会が修正すれば、市長は議会側の提案で成立した条例を公布しようとしないなど、混乱は他の政策にまで広がった。

 国政も地方政治も議会制民主主義ではあるが、異なるのは、地方政治には住民が権力を直接行使できる機会があることだ。憲法も法律も直接民主制に近づけるようできている。

 首相は国会が選ぶが、自治体の首長は住民が直接選ぶ。議会や首長を解散や解職、すなわちリコールできる権利も、住民は持っている。

 名古屋市政の混乱もここに至っては、市民の今の民意を直接確かめるべき局面だともいえる。

 署名活動は二十七日から始まる予定だ。この十年間で議会の解散請求は全国で約七十件あり、半数は不成立。ハードルは低くはなく、二百万人を超す大都市では例がない。

◆36万人余の署名が必要

 名古屋市の有権者百八十万人のほぼ五分の一にあたる約三十六万六千人の署名を集めねばならず、市長解職請求に向けた鹿児島県阿久根市の約六千七百人とは比較にもならない。

 民意がつねに正確に反映されれば理想だろう。フランス革命をもたらした思想家ルソーが「選挙の時は自由、それ以外は奴隷」と言ったのは理想はやはり遠いからであり、リコールという手段はそのためにある。

 河村改革の方向に反対の声は多くを聞かない。税金の無駄遣い排除は国と同様、地方でも必然の課題となっている。役所仕事、議会の怠慢を訴える人は多い。問題はその手法だ。市長支持派は、議会という高くて厚い壁を崩すには河村流の“革命”的手法が必要という。そうでない人たちは極端、過激な手法ではまとまるものもまとまらないと言う。

 署名が必要数集まれば、住民投票となり、それも通過すれば議会は解散、選挙となる。今の河村市長のシナリオでは自ら辞職し市長選、市議選を来年二月予定の愛知県知事選に合わせトリプル選挙に持ち込むという。その市議選には、自らが代表の地域政党「減税日本」の候補を押し立て、議会を制し、河村改革を一気に実現する戦略だ。

 一方、議会側には、状況次第では市長不信任を議決し、選挙の主導権を取るとの作戦も聞かれる。

 地方自治は二元代表制とよく言われる。同じ有権者から市長と議会という二つの市民代表、権力が生まれ、そこに対立の芽も妥協も話し合いもある。

 この二つの権力について地方自治法はそれぞれの権限を定めている。予算について、市長はそれを編成し執行する権限をもつが、議会は編成はできず修正の権限しかない。市長が優越している。一方、互いの身分については、議会は市長に不信任を突きつけることができるが、市長は不信任を突きつけられない限り、議会を解散できない。ここでは議会が優越している。

 両者は一方だけでは動けないよう権限と地位が割り振られている。両者が均衡を取りつつ、それぞれの権限を果たしてこそ自治の歯車はうまく回る仕組みになっている。

◆地域主権が担えるよう

 名古屋市に限らず、全国を見渡せば、これまで眠りこけていたような地方政治は明らかに変わりつつある。市長と議会が政策で争うことは本来の姿であり、沈黙やシャンシャンの議会と比べれば、格段の進歩だ。とはいえ、知恵と譲歩で合意を導ける関係がないのなら市民生活はすぐに止まってしまうだろう。

 なれ合いもごめんだが、対立だけでも困る。「地域のことは地域で」という地域主権が日本全国で進もうとしている。名古屋だけでなく、今は全国の市民、住民がわがまちの自治を考える正念場にちがいない。

 

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