まあ、当然の帰結なのかもしれない。民主党の代表選に小沢前幹事長が出馬を決めた、とのニュース▼何となれば、小沢さんの別名は「選挙の鬼」、あるいは「選挙の達人」。代表選も選挙には違いないから、一等得意な舞台を前にじっとしていられなかったとしても驚くには当たらない。いわば、<得手に帆を揚げる>というやつである▼もっとも、国民は「政治とカネ」の問題に十分な説明がないことも、まだ三カ月前に幹事長を辞して、表舞台を去ったばかりだということも忘れていない。しかも、急激な円高と株安で景気が二番底の危機に瀕(ひん)しているなど、待ったなしの課題が数多(あまた)あることも、当然、分かっている▼もちろん、菅政権が発足間もなく、もし小沢さんが代表選に勝てば、またまた代わって四年で実に六人目の首相になるということも国民は先刻、承知。そして、多くがとにかく短命政権はたくさんだ、とも思っている▼そんな思いも、小沢さんの支持派に言わせると「俗論」らしいが、とにかく、これが小沢さんの揚げた帆に吹いている世間の“風”だ。あの諺(ことわざ)の<得手>には得意技だけでなく「順風」の意があるそうだが、そういう感じはない▼有力候補が堂々雌雄を決すること自体は悪いことではない。だが、流行遅れの言葉に重ねるなら「KY」の感も否めない。即(すなわ)ち、“風”が読めていない…。