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2010年8月26日(木)付

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議会解散請求―名古屋市長の強引な問い

名古屋市議会の解散を求める直接請求の署名が明日から始まる。河村たかし市長が、昨春の市長選で最大の公約だった市民税の恒久減税が認められなかったために呼び掛けた。大都市では例がない直接請求だ。[記事全文]

企業の貢献―本業通じ世界の人々へ

企業が発展途上国の貧困や環境などの問題解決に、本業を通じて積極的に貢献する。そんなBOPビジネスの広がりに注目したい。BOPは「経済ピラミッドのすそ野」を指す英語の略称[記事全文]

議会解散請求―名古屋市長の強引な問い

 名古屋市議会の解散を求める直接請求の署名が明日から始まる。河村たかし市長が、昨春の市長選で最大の公約だった市民税の恒久減税が認められなかったために呼び掛けた。大都市では例がない直接請求だ。

 改革を唱えて当選した首長と議会とのぎくしゃくした関係はほかにもある。河村氏がどれだけ議会を説得する努力をしたのかは疑問がある。しかも、この制度はそもそも住民の発意を前提としたもので、首長が旗を振るような使い方は想定していない。とはいえ、分権改革の中で首長と議会のあり方を考え直す契機ではある。

 1カ月で有権者180万人中36万人余の署名を集めれば、住民投票が行われる。そこで過半数が賛成すれば議会が解散され、出直し市議選となる。

 河村氏は、市議選を来年2月の知事選にぶつけたい意向だ。しかも自分も辞職して市長選も同時に行い、一気に自分に有利な態勢をつくる腹づもりのようだ。もともと任期満了に伴い4月に行うはずの市議選を2カ月早めるために解散を求めることは乱暴すぎるとの批判も強い。

 河村氏が恒久減税を提案したのは、それをてこに行政改革を進めたいからだ。ところが市議会は、福祉予算へのしわ寄せなどを理由に減税を1年限りに修正した。そうならば、減税に絞って住民投票を提案する方法もあったのではないか。

 それでも、すでに4万人が署名集めに手を挙げているという。議会不信はそれほど根深いということである。

 河村市長より前の28年間、市議会は共産党を除くオール与党態勢だった。議会は市幹部を市長に担ぎ、行政を追認するなれ合いを続けてきた。

 その間、製造業が好調で元気なナゴヤと言われた時期がありながら、市債残高は一般会計の2倍近い1兆8千億円に膨れ上がった。河村氏が昨年指摘するまで市議会は、市幹部が関連団体に天下りする慣行を黙認し続けた。

 市議の報酬は全国トップクラスの年1500万円。政務調査費も年600万円ある。3月までは議会のたび1日1万円ずつの手当を受け取っていた。

 議員らの「市長も我々も住民に選ばれている。憲法で保障された二元代表制の否定だ」との主張に、市民の共感が広がらないのも道理である。

 そんな議会と行政の機能不全は名古屋だけの話ではない。地域政党を立ち上げた大阪府の橋下徹知事のように、それを変えようとする動きはほかにもある。ただ議会が首長の支持者で固められればまた新たな問題も生じよう。

 首長と議会が健全な緊張関係を保つ。議会は行政をきちんと監視したうえ、政策立案の力も高めていく。そのように地方自治を鍛えていくために、名古屋市民の判断に注目したい。

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企業の貢献―本業通じ世界の人々へ

 企業が発展途上国の貧困や環境などの問題解決に、本業を通じて積極的に貢献する。そんなBOPビジネスの広がりに注目したい。

 BOPは「経済ピラミッドのすそ野」を指す英語の略称。世界の経済構造を、頂点の大金持ちから貧困層に至るピラミッドになぞらえ、下のほうの年収3千ドル未満の約40億人を対象にしている。

 寄付などによる社会貢献ではなく、本業を通じて利益を出しつつ公益の増進を目指す、社会的ビジネスだ。

 欧米のグローバル企業が先導してきた流れだが、これに本格的に乗ろうという日本企業も増え始めた。将来をにらんだ経営戦略の一環というだけでなく、事業の幅を広げる舞台としても価値があるとの判断だ。

 衣料品店「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングは、ノーベル平和賞を受けたムハマド・ユヌス氏率いるバングラデシュのグラミン銀行グループと合弁企業を立ち上げる。現地の人たちの手に届きやすい価格1ドル程度の衣料品の供給に乗り出す。

 原料を現地調達し、現地生産で雇用を増やす。グラミンの少額融資を利用する女性たちによる販売網を築く。利益が出ても株主への配当はせず、再投資してバングラデシュの雇用と所得の拡大につなげるという。

 グラミンはすでに同じ考え方で仏食品大手ダノンとヨーグルト工場を、独スポーツ用品大手アディダスと靴工場を立ち上げるなどしている。

 先進国市場を重視してきた日本の企業は、BOPビジネスの分野では手薄だった。それでもアフリカで防虫剤入りの蚊帳を供給する住友化学や、バングラデシュで水質浄化剤の普及を進める日本ポリグル(大阪市)といった先例はあった。

 最近は浄水器、小型発電機、栄養補助食品などの得意技が生かせないか、検討する企業が増えてきた。

 成功に欠かせないのが現地の人々の支持と協力だ。それには、どんな問題があって何が求められているのかを深く理解する必要がある。

 個々の企業の独力では限界もあり、NGOや公的援助機関とのネットワークづくりが欠かせない。これには何でも抱え込む「自前主義」に陥りがちな日本企業の短所を直す効用もある。軌道に乗れば、優れた日本企業がもつ「売り手よし、買い手よし、世間よし」の三方よしの精神がこれほど生きる市場もないのではないか。

 日本では、途上国に関する情報が政府の援助機関などに散在しているとも言われる。情報を集約して誰でも使えるようにする仕組みの整備を経済産業省が進めているが、多くの企業が挑戦できるようにするための土台づくりとして期待したい。

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