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2010年8月25日(水)付

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情報公開法改正―「国民が主役」近づく案だ

施行から10年目に入った情報公開法の抜本改正に向けて、行政刷新相の下に置かれた「行政透明化検討チーム」の案(大臣案)がまとまった。法律の目的に「国民の知る権利」の保障を[記事全文]

外国人ケア人材―受け入れる責任を果たせ

難解な漢字や用語が出てくる国家試験が壁になり、外国人の看護師や介護福祉士の受け入れにブレーキがかかっている。現状打開へ厚生労働省の検討会が試験などの見直し方針をまとめたが、なお不十分だ。[記事全文]

情報公開法改正―「国民が主役」近づく案だ

 施行から10年目に入った情報公開法の抜本改正に向けて、行政刷新相の下に置かれた「行政透明化検討チーム」の案(大臣案)がまとまった。

 法律の目的に「国民の知る権利」の保障を明記したり、開示請求の手数料を原則廃止したりするなど、大臣案はかなり踏み込んだ内容になっている。相次ぐ迷走・混迷で精彩を欠く民主党政権だが、この問題に関しては「民主党らしさ」を発揮したといえる。

 中でも注目されるのは、政府機関がもつ外交、防衛、治安などの情報の扱いをめぐり、行政側に広く認められている裁量の見直しに言及した点だ。

 今の法律では、情報を公にすると国の安全が害されるなどのおそれがあるかどうかを、行政機関の長がまず判断する。公開を求めて裁判を起こしても審理対象はその判断に合理性があるか否かにとどまり、結果として行政側の意向が尊重されることが多い。

 大臣案はこれを改め、そのようなおそれの有無を裁判所が直接に判断する仕組みとするよう提唱した。警察庁や防衛省、外務省などは「専門の知識や経験を持つ者でないと正しい対応はできない」と抵抗したが、説得力がある言い分とは思えない。

 現行法の下で司法審査が機能せず、「原則非開示」という逆立ち現象が起きている。それを改めるのが大臣案の狙いであり、行政の高度の政策的・専門的判断まで否定するものではない。公にできない理由をしっかり立証し、裁判官を納得させればいい話だ。

 大臣案には、裁判官が非公開の場で文書の中身を見て開示の可否を判断する「インカメラ審理」の導入も盛り込まれた。現在、裁判官は文書の内容を知らないまま、公開してはいけない情報が含まれているかどうかを、周辺資料から推測して判決を出している。

 隔靴掻痒(かっかそうよう)とはこのことだ。このため国民の納得を得られず、制度への疑問と不信を生んできた。インカメラ審理は情報公開訴訟を実効あるものにすると同時に、各省庁やその諮問機関である情報公開審査会に緊張感を与え、適切な対応を促すことにもなろう。

 焦点は大臣案の今後の扱いに移る。法案化の段階で各省庁が改めて抵抗するのは必至だし、政党間の折衝も必要になる。大切なのは「行政機関が保有する情報は国民の共有財産である」という基本を忘れないことだ。

 政権交代の時代を迎え、政府の情報が内部で独占されることの危険と弊害は、与野党の間で共有されているだろう。文書の適正な作成・管理と情報公開。双方がそろってはじめて、行政は民主的コントロールの下におかれる。真に国民が主役となる国を築くために何をなすべきか。各党ともその問題意識を胸に、文字通り政治主導で制度の深化と発展に取り組んでもらいたい。

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外国人ケア人材―受け入れる責任を果たせ

 難解な漢字や用語が出てくる国家試験が壁になり、外国人の看護師や介護福祉士の受け入れにブレーキがかかっている。現状打開へ厚生労働省の検討会が試験などの見直し方針をまとめたが、なお不十分だ。

 看護師国家試験については今後、日本語の病名に英語を併記したり、難しい漢字にかなをふったりして、易しい表現に言い換えするという。

 だが、それで状況が大きく変わるとは思えない。日本語の習得や試験対策への支援など、受け入れのあり方を根本から見直す必要がある。

 外国人看護師、介護福祉士の受け入れは経済連携協定(EPA)にもとづいて2年前から始まった。現在、インドネシア、フィリピンとの間で行われ、昨年度までに看護枠で370人、介護枠で510人が来日した。

 看護師を目指す人は3年、介護福祉士の場合は4年の滞在期間中に日本で資格を取れないと、帰国しなければいけない。介護福祉士は3年の実務経験が受験に必要で、試験に挑戦できるのは1度だけだ。

 昨年初めて行われた看護師の国家試験では、全員が不合格だった。今年初めて3人が合格したが、合格率は1%にすぎない。候補者たちには半年間の日本語研修はあるが、その後の日本語習得や受験勉強は、受け入れた病院や施設任せになっていることが、この数字の背景にある。

 技能を持った優秀な人材の交流をうたいながら、これでは事実上、期間限定で働かせて追い返しているのと同じではないだろうか。そもそも、日本は本当に、こうした人たちに来てもらいたいのかと、世界の国々から疑念さえ持たれかねない。

 こうした現状のもと、来日する候補者は今年度に入って、両国とも前年度の半分以下にまで減っている。

 受け入れを決めた以上は、政府の責任で態勢を整えるのが筋だ。まず、日本に来る前に日本語を学ぶ機会を充実すべきだろう。日本に来てからは、医療、介護の現場で学ぶべきことがたくさんある。

 来日する人たちは母国で看護や介護を学んだ人たちだが、その内容に違いもある。英語や母国語での教材の開発や、受け入れ施設の枠を超えて学ぶ態勢を作れないか。

 滞在期間を見直して、受験の機会も拡大したい。働きながら学ぶだけでなく、奨学金をもらって資格をとれる養成校などで学ぶコースも増やせないものだろうか。

 専門知識は英語などで試験し、仕事に必要な日本語力のテストは別に行うというふうに、試験のあり方も検討すべき課題といえる。

 意欲も能力もある人たちを締め出さない制度にできるかが問われている。

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