HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 17367 Content-Type: text/html ETag: "3c812-43d7-eb17b480" Cache-Control: max-age=5 Expires: Mon, 23 Aug 2010 22:21:44 GMT Date: Mon, 23 Aug 2010 22:21:39 GMT Connection: close
Astandなら過去の朝日新聞天声人語が最大3か月分ご覧になれます。(詳しくはこちら)
8年前の朝日歌壇から宮沢洋子さんの一首を引く。〈夏休みを共に過ごせし甲虫類(こうちゅうるい)森に戻せばもぞりもぞり去る〉。人を楽しませる役目を終え、樹間に消える虫たちを思う。飛ぶものは降り、はうものは止まり、雑木林に静寂が戻る▼なお生気にあふれ、〈もぞり〉どころか羽音ますます高いのが永田町の「民主の森」である。森の主、カブトムシの地位にある菅首相は、当選1回議員約100人と意見を交わすという。時の首相に会いたいと誘われ、「やだよ」と言える猛者は少ない▼その一人である小沢前幹事長。自らの政治塾が開講し、明日は注目の塾長講演だ。鳩山前首相と共に職を辞して以来、小沢氏はめったにお目にかかれぬ、オオクワガタのような存在である▼軽井沢での園遊会。ホストの鳩山氏は「お出ましいただきました」と小沢氏を的確に紹介した。大樹の洞(うろ)から黒光りの巨体がのぞく図だ。ちなみにオオクワガタは臆病(おくびょう)で、危険を察するとすぐ洞に隠れる。飛ぶのも、仕方なく巣を変える時ぐらいという▼菅氏、小沢氏とも、代表選を見すえた〈もぞりもぞり〉であろう。オオクワガタ氏には、取り巻きのカナブンらが出陣を求めている。代役でコクワガタが立つようではカブトムシの思うつぼ、というわけか▼樹液に群がる甲虫の多くは夜行性とか。だからといって、森の主が民主に代わっても暗がりで動く政治とは情けない。政策そっちのけの抗争を、経済も外交も許してはくれまい。見えにくい上、時間と税金を浪費する「樹上のけんか」のむなしさよ。