残暑。夏ばての胃袋には、めん類がありがたい。だが、うどんもそばも原料は輸入頼みだ。世界的な異常気象で穀物が再び高騰しそうな気配。自給率1%の上げ下げに一喜一憂の場合じゃない。
日本の食料自給率(カロリー換算)は、平成が始まった一九八九年度に五割を切ったあと、九年で40%に落ち込んだ。その後七年間は横ばいが続いたが、二〇〇六年度は40%を割り込んで「39%ショック」ととりざたされた。
そして〇七年度は十三年ぶりに上昇に転じ、一昨年度は41%に上っていた。ところが昨年度はまた40%に逆戻り、ことし三月、二〇年度に50%をめざすと新たな農業基本計画でうたったばかりの政府は、出ばなをくじかれた。
〇七年、世界は異常気象に襲われた。そのせいで輸入小麦が高騰し、消費者の「コメ回帰」が起きて自給率を押し上げた。ところが昨年度、輸入小麦の相場が落ち着くと、コメ消費は一転落ち込んだ。天候不順による国産小麦の不作がそこへ追い打ちをかけた。
ことしはまたもや、異常気象が海外の主要な小麦産地を襲っている。ロシアでは干ばつで、穀物の作付面積の25%が壊滅し、政府は小麦などの禁輸に踏み切った。
日本は、うどんやそうめんなどにも使う小麦の九割を輸入に頼る。主な輸入先は、米、豪、カナダの三国だが、カナダや豪州も大雨や干ばつの被害を受けており、世界的な品不足の危険をはらむ。
温暖化の進行に伴って異常気象は激しさを増して頻度も高くなり、食料危機の深刻さも増していくと、最新の科学は予想する。
〇七年度日本の穀物自給率は28%、比較可能な百七十七カ国・地域中百二十四番目の低さだ。他国の小麦相場の波に合わせて一喜一憂するこの国は“主食なき国”になってしまったのではないか。
現政権は、自給率向上の柱に、戸別所得補償を据える。転作農家に一律の補助金を支給するやり方は、農地の保全にはなるだろう。だが、自給率アップにどうつながるか、道筋がよく見えない。消費者に国産が選ばれなければ意味がない。それには価格、品質、付加価値のいずれかで輸入物を凌駕(りょうが)するしかない。
自給率向上の鍵を握るのは結局、100%自給可能なコメである。50%という高い目標達成への道のりは生産者を支援するだけでなく、消費の後押しをするような政策も打ち出すことからだ。
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