九月の民主党代表選に向けた動きが活発になり始めた。首相選びに直結する。数合わせや主導権争いでなく、厳しい経済情勢や「ねじれ国会」など直面する苦境を乗り切る知恵を競う場にすべきだ。
代表選は九月一日告示、十四日投開票。菅直人首相がすでに立候補の考えを表明し、対立候補が出れば、八年ぶりに党員・サポーター参加の本格的な代表選になる。
前原誠司国土交通相、野田佳彦財務相の両グループは首相支持を確認。百人を超す議員が参加した鳩山由紀夫前首相グループの研修会に小沢一郎前幹事長らが出席するなど、駆け引きは熱を帯び始めた。
注目されるのはその小沢氏の動向だ。小沢グループ内の立候補待望論を受け、小沢氏自身もその是非を検討し始めているという。
党首選びは無投票ではなく複数候補による選挙が望ましい。政策を国民の前で競い合えるからだ。
今、日本は内政・外交両面で山積する課題に直面している。
厳しい経済・雇用情勢や膨大な財政赤字、台頭する中国への対応や北朝鮮問題、米軍普天間飛行場返還などの対米関係だ。
これらにどう臨み、解決するのか。その道筋が示されなければ、安心して政権を任せられない。
首相は就任後「最小不幸社会」や「第三の道」などの理念・政策を掲げ、消費税率10%への引き上げ検討を表明した。
これらの理念・政策を七月の参院選惨敗後も維持するのか否か、二〇〇九年の衆院選マニフェストの実現を引き続き目指すのか否かはいまだ明確でないし、ねじれ国会にどう臨むかも見えてこない。
実際に選挙戦になるかどうかは別にして、首相はいま一度、自らの立場を明確にすべきだ。
党内には衆院選マニフェストへの「原点回帰」を目指し、対立候補擁立を模索する動きもある。
それが小沢氏か他の候補になるのかは分からないが、首相に挑むなら、限られた財源でマニフェスト政策をどう実現するのか、具体的道筋を示さなければならない。
小沢氏自身が立候補を決断するのなら、自らの「政治とカネ」の問題についても、あらためて説明する必要がある。
残念なのは、首相の支持固めも対立候補模索も「グループ」と称する集団が行っていることだ。
国民を忘れて内向きの争いに終始すれば、自民党の派閥抗争と何ら変わない。政権交代に託された国民の期待を裏切ることになる。
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