HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 36424 Content-Type: text/html ETag: "f8745-126e-889e980" Expires: Thu, 19 Aug 2010 22:21:15 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Thu, 19 Aug 2010 22:21:15 GMT Connection: close 8月19日付 よみうり寸評 : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
現在位置は
です

本文です

8月19日付 よみうり寸評

 戦争で多数の戦友を失った森澄雄さんにとって8月は思いを誘われる月だった。1988年に、40年連れ添ったアキ子夫人を亡くしたのも8月。この月はさらに格別な月になったことだろう◆その俳人、読売俳壇の選者を37年間も務めた森さんが18日に逝った。()しくも夫人、そして多くの戦友と同じ月の命日になった◆あの日、伊豆へ出かける森さんを夫人は車で近くの駅まで送った。先方に着いて間もなく夫人が心筋梗塞(こうそく)で倒れたと連絡が入る。死に目に会えなかった◆「妻を歌って森さんの右に出る人は少ない」の評がある。〈除夜の妻白鳥のごと湯浴(ゆあ)みをり〉と歌える人はいないだろう◆夫人を(うしな)った後の句集は題して「餘日」。つまり余生の感の深いことを表している妻恋いの句集だ。〈木の実のごとき(へそ)もちき死なしめき〉には、「妻、心筋梗塞にて急逝…」の前書がある◆〈白地着てつくづく妻に遺されし〉〈水餅の春までもちし妻亡くて〉〈亡き妻の連れ添うてをる単衣(ひとえ)かな〉――妻恋いの佳句に感動する。

2010年8月19日13時58分  読売新聞)
現在位置は
です