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8月20日付 編集手帳

 病床の正岡子規は蚊の攻撃に難儀したらしい。蚊を断罪した『刺客蚊公之墓碑銘』と題する一文があることを、樋口覚氏の『短歌博物誌』(文春新書)に教えられた◆血を吸うのは殺生罪、蚊帳の穴をくぐるのは偸盗(ちゅうとう)罪、耳にうるさい羽音は妄語罪、酒の香を慕うのは飲酒罪…〈(なんじ)の一身は(すべ)てこれ罪なり〉。蚊はいつの世もこの季節の嫌われ者である◆ものの本によれば、きょうは「蚊の日」であるとか。1897年に英国の細菌学者ロナルド・ロスが蚊の胃からマラリアの原虫を発見したのにちなんで設けられたという◆「こんなばか、蚊が刺すもんかい。こいつ刺しゃ、蚊がばかンなっちゃう」。おじさんからひどいことを言われたのは落語『唐茄子屋(とうなすや)政談』の若旦那(だんな)だが、性懲りもなく食品を偽装する業者がいて、子を死に追いやる育児放棄の母がいて、この夏も“蚊帳いらず”が世を騒がせた◆まど・みちおさんに『蚊』と題する詩がある。〈蚊も(また)さびしいのだ。()しもなんにもせんで、眉毛(まゆげ)などのある(かお)を、しずかに触りに来るのがある〉。蚊の羽音がふとさびしさを感じさせる夏の終わりも遠くない。

2010年8月20日01時25分  読売新聞)
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