クリの形をした、「栗(くり)せんべい」というお菓子について、公正取引委員会から不当表示だとクレームがついたことがあったらしい。理由は「クリが入っていないのに入っていると思わせるから」▼冗談みたいな話だが、永六輔さんが自著『商人』に書いている。それを知って怒った永さん、当局に、例えばこんなふうにやり返したのだそうだ。「では、キリンビールにはキリンが入っているのか?…かっぱえびせんにはカッパは入っているのか?」▼以後の経緯は知らないが、ネットで確認した限りでは、今も「栗せんべい」は売られているようだ。キリンやカッパ同様、実際、このお菓子を買ってクリが入っていないと抗議する消費者はいまい▼ただ、商品一般となると話は別だ。入っていないものを入っているように思わせる表示は確かに許されない。逆に「入っていない」と表示しながら入っているのはもっとたちが悪いともいえる▼国民生活センターが、電気で煙のようなものが出る「電子たばこ」を調べたら、市販の半分近い銘柄で微量のニコチンが検出されたのだという。しかも、その大半は「ニコチンは含まれない」旨、表示していた▼薬事法にも触れるようだから問題だが、一念発起の禁煙でニコチン依存を断とうと、この商品にすがった人も多いらしいから罪深い。多分、煙(けむ)に巻かれたような心持ちだろう。