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8月19日付 編集手帳

 俳人という職業にはどこかおっとりしたイメージを抱いていた上、同業同士は和気藹々(あいあい)で語らうものと思い込んでいたので驚いた。7年前、本紙に連載された森澄雄、長谷川櫂両氏の『往復書簡』である◆森さんは長谷川さんの一句を引き、「一番嫌いな句だ」「どこかに言葉の(おご)りがある」と書いておられた。遠慮も仮借もない言葉で後輩の芸術を研磨する姿に深く感じ入った覚えがある◆〈除夜の妻白鳥のごと湯浴(ゆあ)みをり〉〈聖夜眠れり(くび)やはらかき幼な子は〉。家族や自然を平明にして深みのある言葉で詠んだ森さんが91歳で死去した◆約200人いた中隊で生還者8人というボルネオでの過酷な戦争体験が俳句人生の原点という。「だから戦後は、ひとりの平凡な人間として生涯を送りたいと強く思うようになりました。妻を(めと)ったら妻を愛し、子供が出来たら子供を慈しみ…」。37年間務めた『読売俳壇』の選者を昨年退いたとき、本紙に寄せた文章のなかで回想している◆〈美しき落葉とならん願ひあり〉。去りゆく身を散る花ではなく落葉に託したところが、平凡な生活者であろうとしたその人らしい。

2010年8月19日01時58分  読売新聞)
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