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年金の保険料を使ってつくられ、「無駄づかい」と批判を浴びた年金福祉施設の処理が、病院を除いて終わった。2005年にできた独立行政法人「年金・健康保険福祉施設整理機構」([記事全文]
中国軍は東シナ海や南シナ海での懸案に対処するため、行動範囲を拡大する新たな能力の獲得を目指している。中国の軍事力増大は、東アジアの軍事バランスを変える主な要因だ――。米[記事全文]
年金の保険料を使ってつくられ、「無駄づかい」と批判を浴びた年金福祉施設の処理が、病院を除いて終わった。
2005年にできた独立行政法人「年金・健康保険福祉施設整理機構」(RFO)が、厚生年金会館や健康保養センターなど全国の301施設を計約2221億円で売った。5年前の評価額を206億円上回ったという。
入札の参加者を増やして競争させるための工夫をこらすなど、RFOが民間のプロを中心に丁寧に作業を進めたことは評価できる。
しかし、経費を除き、国庫に戻ったのは2023億円にすぎない。一方、建設や維持には、今回の施設分についてだけでも1兆1千億円余りが投じられている。年金の加入者が施設利用で得た便益があったとはいえ、回収できたのは2割程度だ。
一連の出来事が年金への信頼を深く傷つけたことを思えば、金額以上の損失があったと考えなければならない。
福祉施設に焦点が当たったきっかけは、04年の年金改革だ。負担増が議論される中、保険料が年金給付以外に使われることに批判が高まった。
施設を運営する団体が、厚生労働省や社会保険庁から多数の天下りを受け入れていることも発覚し、国民の怒りに火をつけた。
この問題の起源は古く、根は深い。
厚生年金の前身、労働者年金が創設された1942年当時の担当課長による回顧録は赤裸々だ。
「保険料収入が何十兆円もある。年金を払うのはずっと先なので、今のうち、どんどん使ってしまっても構わない。すぐに福祉施設でもつくらなければならない」と考え、「厚生省の連中がOBになった時の勤め口に困らなくなる」という思惑もあったという。
こうした意識は戦後も引き継がれた。厚労省や社会保険庁は「福祉施設事業に投入される保険料は大きくないので、年金給付には影響を与えない」と考えていたようだ。
政治家は官僚の過ちをチェックするどころか、むしろ「どんどん使え」と圧力をかける側に回ったことを、よく覚えておきたい。
85年の国会でも、野党議員が「保険料を使って客船をつくったらどうか。造船業界も繁栄するし、船員も雇用できる」という質問をしている。考え違いというしかない。
国家財政が厳しい今、年金積立金をその穴埋め財源として使えるのでは、と考える政治家もいる。だが、130兆円近い年金の積立金は、将来世代の保険料負担を抑えるためにある。そんなことをすれば年金への信頼がさらに傷つきかねない。
過ちは繰り返さないよう、いま一度、肝に銘じておきたい。
中国軍は東シナ海や南シナ海での懸案に対処するため、行動範囲を拡大する新たな能力の獲得を目指している。中国の軍事力増大は、東アジアの軍事バランスを変える主な要因だ――。
米国防総省は、16日に発表した中国の軍事力についての年次報告で、このような強い警戒感を示した。
「中国の限られた軍事力の発展は完全に防御のためだということを無視している」(共産党機関紙・人民日報)と、中国側は批判する。だが、海洋権益をめぐる中国の強い意欲に裏打ちされた一連の行動に、周辺国が驚かされ続けているのは事実である。
日本に対しては、4月に10隻で編成された東海艦隊の連合艦隊が沖縄本島と宮古島の間の公海を太平洋上に抜けたり、艦載ヘリが海上自衛隊の護衛艦に異常接近したりした。
中東と北東アジアを結ぶ海上交通路である南シナ海については、中国はこのところ、台湾やチベットと同様に「核心的利益」と呼ぶようになり、漁船保護のためとして頻繁に海軍艦艇を派遣している。
南シナ海の諸島をめぐっては、中国は東南アジア諸国などと領有権を争い、ただでさえ緊張している。国防総省の報告は、空母保有を含めた中国の軍事力増大は「もろい現状を崩壊させ、地域の均衡を変える可能性がある」と指摘した。
そんな危機感からか、クリントン米国務長官は先月、ベトナムで開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラム(ARF)の際、南シナ海における航行の自由が「米国の国益」と主張した。そのうえで、領有権の多国間協議をもとめるASEAN勢を支持し、二国間解決を唱える中国を牽制(けんせい)した。
米国は今月になって、そのベトナムと南シナ海で、横須賀基地を母港とする原子力空母ジョージ・ワシントンやイージス駆逐艦ジョン・S・マケインを動員して軍事交流をした。米軍の発表では、空母は黄海での米韓合同軍事演習にも派遣される。
米海軍の動きを中国から見れば、米国こそが中国の海上安全保障を脅かしている、と映るだろう。中国では、黄海は「玄関」で、南シナ海は「客間」とたとえられることがあるほどだ。
しかし、中国を信用しようにも、軍事力増大は不透明なやり方で進められている。中国は、米政府による台湾への武器売却計画決定に対する報復措置として米国との軍事対話や交流を中断した。米国への反論があるなら、それらを再開してぶつければいいだろう。
日本も中国とは東シナ海の問題をかかえる。アジアの海を平和と繁栄の海にするため、米国だけでなくASEANとも協調しながら、中国と緊張緩和の道を探るべきである。