子宮頸(けい)がんワクチンの接種費用への公費助成にようやく国が重い腰を上げ始めた。これまで世界の主要国の中で日本のみが公費助成をしていないだけに、早急に始め、遅れを取り戻すべきだ。
長妻昭厚生労働相は今月初め、二〇一一年度予算の概算要求に子宮頸がんワクチンの公費助成を盛り込む方針を明らかにした。
民主党は〇九年八月の衆院選に向けた政策集の中で、同ワクチンの日本での開発の推進とともに「任意接種に対する助成制度」の創設を掲げたが、いずれも実施を先送りしてきた。
一〇年度は検診の無料クーポン券の配布と検診手帳の交付の予算を計上したが、これらは自公政権時代の〇九年度から始まった政策で、その継続にすぎない。
ワクチンは十分な免疫力を得るには三回接種が必要で、個人負担だと合計五万〜六万円かかる。
国の対応の遅れを尻目に、単独で負担・補助する自治体が急速に増え、これまでに百六十を超している。だが、接種費用の助成を自治体に任せると、居住地の違いで助成を受けられるかどうかが決まり、格差が生じると以前から指摘されていた。厚労省が公費助成に転じたのは、こうした声を無視できなくなったためだろう。
子宮頸がんが注目されているのは、現代医学で予防ができるようになった唯一のがんだからだ。
わが国では毎年一万五千人が発症し、三千五百人が亡くなっている。二十〜三十代女性のがんで最も多い。発見が遅れれば命にかかわるほか、助かっても出産できなくなる。病原体はヒトパピローマウイルスで、この中の特定の二つの型のウイルスによる感染が若い女性では八〜九割を占める。
日本で昨年末から販売が始まったワクチンは、この二つの型の感染予防が目的で、欧米では重い副作用はこれまで報告されていない。これに定期検診を組み合わせれば、高い割合で予防できることが欧米で確認されている。
予防が徹底すれば長期的に見て医療費が少なくて済むため、三十を超す国が接種費用を助成している。ほとんどの国が十歳前後からの接種を勧め、学校で集団接種している国も少なくない。出足が遅れたわが国は、こうした国の経験に学び、効率的な接種体制をつくる必要がある。
自民、公明両党は子宮頸がん予防のための議員立法を検討している。民主党とも協力して超党派で取り組んでもらいたい。
この記事を印刷する