ことし四〜六月期の国内総生産(GDP)の伸び率が前期に比べ大幅に低下し、景気減速傾向がはっきりしてきた。円高・デフレも加速している。日銀は量的緩和復活を視野に入れるべきだ。
物価要因を除いた実質GDPの速報値は年率換算で前期比0・4%増にとどまり、一〜三月期の4・4%から大きく後退した。
生活実感に近い名目GDPでは3・7%減だ。名目がマイナスなのに実質がプラスなのは、物価動向を示すデフレーターが前期比1・0%減と下落したためだ。
需要項目をみても、個人消費は横ばい、設備投資は微増だが、公共投資が落ち込んだ。輸出から輸入を引いた純輸出も微増にとどまっている。内需の落ち込みをかろうじて外需が支えた形である。
先行きをみても米国は景気後退感が強まっており、金融不安を抱えた欧州も不透明感が残る。
政府・日銀の無策を見透かしたように円高が進んでいるうえに、デフレが加速するようでは当分、日本経済の自律反転は期待できないのではないか。
内閣府は今回の速報値でドル換算した日本と中国のGDPが逆転したことを認めた。国民の生活水準を示す一人当たりGDPで日本の優位は変わらず、一喜一憂する必要はないが、経済力の差を象徴する出来事といえる。
数字よりも、問題なのは政府・日銀の優柔不断ぶりだ。
津村啓介内閣府政務官が「すでに景気は踊り場入りしているかもしれない」と語ったかと思えば、荒井聡国家戦略・経済財政相は「設備投資、個人消費に改善傾向がみられる。踊り場入りという表現は当たらない」と否定した。
肝心の政策責任者の間で景気の基本認識が違っている。いったい政府の中はどうなっているのか。「踊り場」と認めるかどうかなどという議論は政策対応以前の話である。これでは揺らぐ景気に真正面から立ち向かえるはずもない。
菅直人首相も先週、円高加速を受けて白川方明日銀総裁と会談する方向に傾いたかと思えば、具体的な日程は決まらず腰砕けになった。金融市場はこうした展開をしっかり見ている。
政府はこれから来年度予算編成である。赤字を抱えた財政政策には多くを期待できない。ここは日銀の役割が大きい。政策金利を0・1%に据え置き、総裁が懸念を口にするだけでいいのか。大胆な政策転換を検討すべきである。
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