八月十五日は韓国にとって日本から独立した「光復節」。記念式典で演説した李明博大統領は「歴史を忘れず、ともに新しい未来を開こう」と呼び掛けた。隣国との協力の在り方を問い直したい。
今年は日韓併合条約の締結から百年になる。菅直人首相は十日、談話を発表し、植民地支配に対する「痛切な反省」と「心からのおわび」を表明した。
大統領は演説で首相の談話に言及し「日本の一歩前進した努力だと評価する」と明言した。
菅首相は植民地支配について、韓国人の「意に反して行われた」と述べたが、李大統領はこの表現を引用して、「日本政府として初めて」と語った。韓国国民の意識を考慮した内容だったと、一定の評価をしたといえよう。
両国は国交を正常化した一九六五年の基本条約で、植民地時代の個人補償を含めた請求権は決着したと合意した。朝鮮半島に由来する文化財の引き渡しも解決したと確認した。
李大統領は「克服すべき課題はまだ残っている」と述べたが、具体的な説明はなかった。基本条約の枠組みを崩すつもりはないという、韓国政府の見解をあらためて示したと受け止めたい。
韓国内では補償問題や文化財の返還について不満があるようだ。歴史をめぐる論争が日韓関係全体を傷つけることがないよう、両国間の冷静な対応が必要になる。
大統領は続いて、「韓日両国は具体的な実践を通じて、新しい百年をつくっていかねばならない」と訴えた。
未来志向の協力は多くの分野で可能であり、経済など民間の役割が大きい。
高品質テレビや携帯電話など、韓国企業の躍進は日本にとって刺激になる。外国語を学び、海外に積極的に留学する韓国学生の元気さを、日本の若者も見習いたい。日韓経済連携協定(EPA)締結の交渉も本格化させる時だ。
市民団体や地方自治体の交流も深まっている。仮に歴史の問題で対立しても、経済協力や草の根の交流は影響を受けない「信頼しあえる関係」を築きたい。
李大統領は演説で、将来の北朝鮮との統一に備えて財源を準備する「統一税」を初めて提唱した。
北朝鮮の核開発を中止させ、不安定な体制にどう対応するか。未来を視野に入れた日韓協力では、朝鮮半島の安全保障への取り組みがこれまで以上に重要になる。
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