HTTP/1.1 200 OK Date: Fri, 13 Aug 2010 21:12:30 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:景気と雇用を考える政 政策不在が招く円高:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

景気と雇用を考える政 政策不在が招く円高

2010年8月13日

 円高が加速している。米国の景気後退懸念が主因だが、政府・日銀の政策不在が市場から標的になっている面もある。無策が不況を招きかねない。

 円は海外や東京市場で一時一ドル=八四円台に突入した。実に十五年ぶりの水準である。

 円高は国全体として購買力を高めるが、目先は輸出製造業の収益にマイナスだ。東京株式市場は円高を嫌って一時、平均株価が年初来安値を更新した。

◆痛い経験に学ばぬ日銀

 円の急伸は日米の金融政策にずれが生じたためだ。

 米国の連邦準備制度理事会(FRB)は十日、予想を上回る雇用統計の悪化を受けて、国債購入の拡大など金融緩和に動いた。だが、同じ日に金融政策決定会合を開いていた日銀は政策スタンスを変えなかった。

 日米間で金利差が生じ、金利差による損失を為替調整で埋め合わせるように投資家が動いた結果が今回の円高である。

 実は、今回とまったく同じような展開が二〇〇八年十月にもあった。当時は米欧六カ国・地域の中央銀行が協調利下げに動いたにもかかわらず、やはり日銀だけが政策を変えなかったために、一挙に円高が進んだ。

 日銀はこのときの経験からなにも学んでいないようだ。米国の先行き不透明感が根底にあるのはたしかだ。だが、FRBの政策転換が事前に予想されていながら、日銀が動かなかったのは、事実上の「円高容認」と受け止められてもしかたがない。

 菅直人政権の無策もある。

 「九月に民主党代表選を控えた菅首相は政権の先行きがはっきりするまで動けない」。菅政権は日銀からも金融市場からも、そう足元を見透かされている。

◆就職先がない学生たち

 日銀は「政権が代われば、緩和要求が強まる。いま緩和しても無駄弾になる」と傍観する。市場は「日本は政策まひ状態。ドル安、ユーロ安を仕掛けても対応できない」とみて、安心してドルやユーロを売る。そんな駆け引きが舞台裏で繰り広げられている。

 米国も欧州も財政金融政策が手詰まりになって、本音では輸出振興に直結する自国通貨安を歓迎する構図にある。今回の円高は市場が欧米の思惑を読み取って、ドル安とユーロ安を促している面がある。いわば「市場版の近隣窮乏化政策」である。

 代表選を控えた菅首相は政権批判を強める小沢一郎前幹事長グループへの対応で頭がいっぱいなのか、軽井沢のホテルにこもったままで、形ばかりの円高懸念のコメントが出ただけだ。市場はますますドル売りで政府の出方を試すだろう。せめて白川方明日銀総裁を呼び出して会談するくらいの方策を考えてはどうなのか。

 政府・日銀の無策が円高を招いている。このままでは景気後退が現実になりかねない。

 懸念されるのは雇用情勢だ。

 猛暑の中、来春に卒業を控えた学生たちが汗まみれで就職活動に走り回っている。すでに採用のピークは過ぎたが「数十社を回ったが、内定をもらえない」という学生が続出している。

 景気の先行き不透明感が強く企業が採用を絞っているのに加えて、超氷河期だった昨年の就職留年組もことしの就職戦線に再挑戦し激戦になっているからだ。

 今春、大学を卒業しても就職、進学しなかった学生は八万七千人にのぼっている(文部科学省)。就職率は六割にとどまり、調査開始以来、前年度比で最悪の下げ幅を記録した。

 このままだと、留年やアルバイト生活を余儀なくされる学生が大量に出てきそうだ。二十二歳を過ぎて、行き先のない若者はなにをして、いや、どうやって生きていくのだろうか。胸が痛む。

 企業が国内採用を絞る一方、海外採用を増やす動きもある。電機大手、パナソニックは一一年度の国内採用を四割減らす一方、海外採用は逆に五割近く増やす方針を発表した。

 世界規模で事業を展開する企業は規模を問わず、人材の国際化を急いでいる。国内市場が縮小していくなら、海外に活路を見いだす以外にない。そのために英語を話し、勉学・勤労意欲も十分な海外とりわけアジアの学生たちに熱い視線が注がれているのだ。

 日本の学生のライバルは海外の学生たちになってきた。

◆もっと感度を高めよ!

 菅政権は新成長戦略を掲げて景気対策を重視しているように見えるが、円高対応一つとっても、実際の政策はなにも動いていない。予算編成に忙しいはずの霞が関も夏休みである。

 政治家は焦りの表情を浮かべる学生たちになにを語るのか。もっと感度を高めるべきだ。

 

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