HTTP/1.1 200 OK Date: Thu, 12 Aug 2010 21:14:25 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:墓標の一つに十五歳と十二歳の兄妹の写真があった。そこにこん…:社説・コラム(TOKYO Web)
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【コラム】

筆洗

2010年8月12日

 墓標の一つに十五歳と十二歳の兄妹の写真があった。そこにこんな歌が刻まれている。<白金も黄金も玉も何にせむ/子にまされる宝/世にあらめやも>。二人の子を失った親の悲憤が歳月を超えて伝わってきた▼日航ジャンボ機が群馬県上野村の御巣鷹の尾根に墜落、五百二十人が死亡した事故からきょうで二十五年になる。先月下旬、少し早い慰霊登山をしてきた。霧に覆われた広大な斜面に数え切れない墓標や石仏が点在、失われた人命の多さに息をのんだ▼この尾根に美谷島邦子さんが夫と四時間かけて登ったのは事故の三日後。小学三年生の健君を迎えに行った二人の前に、地獄絵のような凄惨(せいさん)な光景が広がっていた▼悲しみのふちにいた遺族は、美谷島さんらを中心に事故から四カ月後に「8・12連絡会」を結成。励まし合いながら、日航や行政当局に空の安全の確立を求めてきた。機体の残骸(ざんがい)や遺品の保存を訴える活動は、日航の安全啓発センター創設の礎になった▼四半世紀の活動をまとめた『御巣鷹山と生きる 日航機墜落事故遺族の25年』で、美谷島さんは悲しみは乗り越えるものではないと書いた。「亡き人を思う苦しみが、かき消せない炎のようにあるからこそ、亡き人と共に生きていけるのだと思う」と▼事故でなぎ倒された木の株からは、新しい芽が吹き出している。遺族は今年も御巣鷹に登る。

 

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