中東ホルムズ海峡での商船三井の大型原油タンカーの爆発は、テロの疑いが強まった。日本だけでなく世界のエネルギー輸送路への不安であり、各国と連携した情報収集と防止策を急いでほしい。
爆発は七月二十八日未明、ペルシャ湾につながるイランとアラブ首長国連邦(UAE)に挟まれた海峡で発生、商船三井のタンカー「M・STAR」(一六万トン)の後部舷側が大きくへこんだ。
UAE当局は当初、地元紙を通じて「地震波で起きた」とテロを否定していたが、乗組員は「直前に閃光(せんこう)を見た」と、外部からの攻撃の可能性を指摘していた。
今月に入り、国際テロ組織アルカイダ系で「アブドラ・アッザム旅団」と名乗るイスラム過激派が犯行声明を出した。真偽は不明だが六日になって、UAE沿岸警備隊が「爆薬の痕跡から手製の爆発物を積んだボートによる攻撃の可能性が高い」とテロ攻撃の見方に変えた。それが事実なら、世界の原油の四割が通過するエネルギー流通の要衝、ホルムズ海峡の安全を揺るがすことになる。日本は、この海峡経由の原油に八割を依存し、また、世界にとって深刻な事態である。
犯行グループは声明の中で「イスラムの土地資源を収奪している不信心者による世界秩序を弱めるため」「原油価格や世界経済にインパクトを与えた」と述べ、原油市場かく乱の意図を感じさせようとした。つまり脅しである。その一方、日本のタンカーを標的にしたわけではないとの見方が強い。
現地では、同じ名を名乗る集団がいくつもあり、中東専門家や石油関係者は「テロ便乗犯の可能性」も指摘している。
ホルムズ海峡周辺では、一九八〇年代のイラン・イラク戦争中、タンカー攻撃が相次いだことがある。その後は起きていない。9・11テロ以降は、米国が沿岸各国とともに警戒に当たり、米海軍第五艦隊は「UAE当局と捜査内容を協議し、警戒を強める」との声明を出した。海賊が出没する紅海出口では八年前、フランス船籍の大型タンカーに爆弾を積んだアルカイダ系の小型ボートが激突、十三人が死傷している。
日本政府は「可能性ある原因を予断なく分析したい」(前原国土交通相)としており、付着物の分析、捜査への協力を通じ事実解明をまず急ぎたい。船舶に自衛用機材が必要との指摘もある。各国横断的な対策が急務である。
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