市民を巻き込み無差別に殺傷するクラスター爆弾の禁止条約(オスロ条約)が発効した。日本も積極的に後押しした。米ロ中など、大量に保有する国々に条約署名を強く働きかけたい。
クラスターとは英語で植物の「房」の意味。一発の爆弾から何百という子爆弾が飛び散る。広範囲に目標物を破壊するが、不発弾が残ることが多く「第二の地雷」とも呼ばれる。ベトナムはじめアフガニスタン、イラクの戦場、レバノンやセルビア紛争で使われた。
不発の子爆弾には手に取れる大きさで、色鮮やかなものもある。子どもがおもちゃと勘違いして触り、死亡したり手足を失う事故が後を絶たない。
条約は、クラスター爆弾の使用、製造、開発、貯蔵、保有と輸出入を禁止した。批准した保有国は今後八年以内にすべて廃棄し、自国または管理下にある不発弾を十年以内に除去するよう義務付けられた。被害者には医療、リハビリ、心理的なケアを提供する。
条約発効は無差別兵器の廃絶に向けた第一歩だと歓迎したい。ノルウェーやオーストリアなど有志国が主導し、日本も昨年、十四番目の批准国になった。七月末までに署名は百七、批准は三十八カ国に達し発効に必要な批准国数(三十)を上回った。
政府だけでなく、NGOの国際的なネットワークが重要な役割を果たした。日本では「地雷廃絶日本キャンペーン」が積極的に活動した。十一年前に発効した対人地雷禁止条約(オタワ条約)と同様に、市民の力が非人道的な兵器の禁止に貢献した。
だが、大量のクラスター爆弾を保有する米国をはじめ、ロシア、中国、イスラエルなどが条約に署名していない。米政府は「全面的な禁止を受け入れれば、米兵や同盟国を危険にさらす」と主張している。同爆弾の効果を認める国々が多く、世界全体で数十億発が保有されているという。
国際的な世論を高め、保有国に条約加盟を強く促したい。対人地雷の場合、米国は条約には署名していないが、近年は戦闘での使用を自粛している。クラスター爆弾でも、保有国に対し同様の波及効果を期待する。
日本も自衛隊が保有するクラスター爆弾を全量廃棄する方針で、来年度には廃棄に着手する。十一月にはラオスで国際会合がある。不発弾処理や負傷者の治療など、日本は積極的な支援を進めたい。
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